社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
勤務社労士、あるいはその他登録の社労士が、いずれ開業しようとしている場合、業務に関するスキルや経験を得るため、また、見込客獲得のために無料で自分の名前で他人からの依頼を受けて社労士業務を行ってもよいでしょうか。報酬を得なければ業として成り立たないので、「業として行う」ことにはならないと思うのですが。
ご質問のような行為は、社会保険労務士法違反となります。社会保険労務士法第2条に社会保険労務士の業務についての規定があり、「~に掲げる事務を行うことを業とする」という文言がありますが、そこでの「業とする」とは、社会保険労務士法第2条に規定された社会保険労務士の業務を、反復継続して行う意思を持って、反復継続して行うことをいい、有償、無償の別を問わないとされています。「勤務登録」や「その他登録」の社労士(非開業社労士)は、例え無料であっても、自分の名前で社労士業務を引き受けることはできません。
職務上請求書は勤務社労士でも使うことができますか。
社労士には、職務上の理由で、委任状がなくても住民票や戸籍謄本を取得できる手段が用意されています。これを職務上請求といい、具体的には「職務上請求書」を関係行政機関の窓口に提出することにより、指定した人の住民票等を取得できます。もちろん、社労士がその業務を遂行するために必要な範囲で使用する場合に限られます。
その「職務上請求書」を勤務社労士が使うということについては、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人に勤務する社労士の場合は業務上使用することはあり得ます。しかし、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所に勤務登録する勤務社労士の場合は、社内の従業員についての手続きしか行うことができず、実務上職務上請求書を使用することはありません。
社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所に勤務登録している社労士が、他者からの求めに応じて労働・社会保険関係手続業務を行うことはできないため、その目的で職務上請求書を使用することもできないということになります。
勤務社労士でも自ら外部の方を対象に社会保険労務士と名乗って行うことができる業務としてはどのようなものがあるでしょうか。
例えば、成年後見人業務は社会保険労務士法に規定された社労士業務には該当しない位置付けであり、それを勤務社労士が自ら引き受ける場合において、社会保険労務士と名乗ることについては差し支えないとされています。都道府県社会保険労務士会によっては成年後見人業務の推進について組織的な取り組みを行っており、今後社労士にとって成年後見人業務がより身近な業務になる可能性があります。
また、社会貢献を目的として全国社会保険労務士会連合会と都道府県社会保険労務士会が推進する学校教育の事業において、学校の生徒、学生の方を対象として「出前授業」を行う場合は、勤務社労士も社会保険労務士として授業を行って差し支えないという扱いになります。
社会保険労務士が労働・社会保険関係書類の作成や提出をする場合には記名押印等をすることになっています。一方、勤務社労士は自分の名前で業として社労士業務を行うことができないことになっています。勤務社労士が行政機関等に提出する書類の作成等を行う場合、その勤務社労士は自分の名前を記して作成することもできないのでしょうか。
労働・社会保険関係書類の提出代行に際して勤務社労士が記名押印をすることについて、社会保険労務士法施行規則第16条第1項で開業社労士、社会保険労務士法人の社員、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人に勤務する勤務社会保険労務士の区別なく、申請書等の作成をした場合には、当該申請書等の作成に係る社会保険労務士の名称を冠して記名押印するとの趣旨を規定しています。
記名押印の取扱いとしては、通達により、社労士が定型印を押印する際に、開業社労士や社会保険労務士法人の社員、社会保険労務士事務所及び社会保険労務士法人に勤務する勤務社労士の定型印については「提出代行者」の印影とすること及びその形状等が規定されています。また、それ以外の一般事業所の勤務社労士は「事務担当」の印影とすることが、同様に定められています。
特定社会保険労務士と名乗っている人がいますが、それ以外の社会保険労務士との違いについて教えて下さい。
特定社会保険労務士とそれ以外の社会保険労務士の違いは、裁判外紛争解決手続(ADR)において、特定社会保険労務士は代理人になれるが、それ以外の社会保険労務士は代理人になれないというところです。特定社会保険労務士は、社会保険労務士の中から「厚生労働大臣が定める研修」を修了し、「紛争解決手続代理業務試験」に合格した者が、その旨を連合会に備える社会保険労務士名簿に付記しなければなることができません。
最近増加している個別労働紛争(労働者と会社側とのトラブル)において、その解決手段として、裁判外紛争解決手続(ADR)が注目されています。これは、裁判によらないで、当事者双方の話し合いに基づき、あっせんや調停、あるいは仲裁などの手続きによって、紛争の解決を図るというものです。
特定社会保険労務士は、トラブルの当事者の言い分を聴くなどしながら、労務管理の専門家としての知見を活かして、依頼者のために、個別労働関係紛争を簡易、迅速、低廉な「あっせん」等の手続きにより、和解に導くことを目指します。
なお、特定社会保険労務士であっても、依頼者の代理人となれるのは、労働局のあっせんや社会保険労務士会が運営する「社労士会労働紛争解決センター」でのあっせんの場等に限られ、例えば労働者と会社側のあっせんの手続きの開始から終了までの間に直接和解の交渉をすることはできても、あっせん以外での個別の交渉において代理人となることはできません。また、あっせん等の手続外で申請人等を代理して和解することも認められません。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」とはどのような機関でしょうか。また、「労働紛争解決」とありますが、どのような事件を扱っているのでしょうか。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」は、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」に基づき茨城県社会保険労務士会が設置、運営する民間の紛争解決機関であり、事業主と労働者との間の個別労働紛争を「あっせん」により解決することを目的としています。平成21年9月16日に法務大臣へ民間紛争解決手続の業務の認証を申請し、12月18日に認証されました(法務大臣認証第52号)。また、平成22年1月7日に厚生労働大臣へ同業務を行うことができると認められる団体の指定を申請し、同年3月1日に指定されました(厚生労働大臣指定第17号)。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」が扱う案件は、解雇、配転、賃金未払に関することや、職場内でのいじめ、嫌がらせなどの労働関係に関する事項ですが、労働組合等が関与する集団的な紛争等、扱うことができない案件もあります。これまで扱ってきた事件の大部分が、解雇等の雇用の終了に関するもので、解決方法については、金銭(解決金)の支払いによる和解がほとんどです。
個別労働紛争の解決について、「社労士会労働紛争解決センター茨城」にあっせんの申立をすることにはどのようなメリットがありますか。
社会保険労務士会が法務省の認証と厚生労働省の指定を受けて運営する民間のADR機関である「社労士会労働紛争解決センター」は、紛争当事者の一方からの申立に基づき、第三者である有識者(社会保険労務士、弁護士等)からあっせん委員を選任して紛争解決に向け取り組みます。あっせん委員は公正、中立の立場で申立てについて申立人や被申立人の意見等を聴取したうえで審議し、和解に向けたあっせん案を提示します。
裁判等の他の紛争解決制度と比較したあっせんの特徴として主なものを挙げると下記のようになります。
①手続きが簡単です。
あっせんの申立てをしたい場合は、どのような事件なのかお知らせいただく必要がありますので、あらかじめ電話等で予約をしたうえで本会事務局にお越しください。事件の種類によっては「社労士会労働紛争解決センター」では扱うことができないことがあります。また、あっせん期日の場において、あっせん委員は申立人、被申立人双方から話を聞きますが、申立人と被申立人が直接顔を合わせることはありません。関係者のスケジュール調整により設定するあっせん期日には、申立人、被申立人に本会が指定する場所(茨城県社会保険労務士会館)にお越しいただきますが、それは通常1回で済みます。
②短期間で済みます。
申立てから通常1~3か月以内での解決を目指しています。それ以上の長期になるケースがまれにありますが、その原因としては、申立てに応じて話し合いをするかどうかについて被申立人の対応が決まるまでに時間がかかっている場合がほとんどです。
③申立てにあたっての費用が抑えられます。
社労士会労働紛争解決センター茨城では、申立についての手数料等はかかりません。ただし、関係書類を郵送する場合等の実費は別途かかります。
④手続きはすべて非公開です。
裁判は原則として公開ですが、社労士会労働紛争解決センターのあっせんについてはすべて非公開であり、あっせんの関係者以外に知られることはありません。また、あっせん委員を含め関係者には守秘義務が課せられています。
⑤和解には民法上の和解契約の効力があります。
申立人と被申立人双方の合意により和解した場合は、紛争の当事者及びあっせん委員の記名押印をした和解契約書を取り交わします。当事者双方に契約を守る義務が発生することになります。
なお、あっせんの制度の注意点としては、以下の通りです。
①あっせん期日への参加について強制力はありません。
被申立人があっせんの申立についての話し合いを拒否した場合はそれで終了になり、あっせん期日を設定しても強制的に出頭させるような扱いはできません。
②和解案についても強制力はありません。
あっせん委員から提示されたあっせん案について、紛争当事者は拒否することができます。しかし、被申立人の側としては、考え方によっては、あっせんの申立をされたことが紛争解決の近道になるということができます。非公開の場で個別の事件について専門家であるあっせん委員の意見を直接聞くことができるという機会を活用し、あっせんの制度を紛争解決に役立てていただきたいと思います。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」のあっせん委員は、例えば事業所と労働者の間で紛争が起き、雇用の継続が不可能になった場合においても、その後それぞれの事業活動や生活があることを踏まえながら、労働法に関する専門知識や経験を生かして和解による解決を目指します。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」にあっせん申立をすることができるのは、労働者に限られるのでしょうか。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」は、労働問題を扱うあっせん機関であり、申立対象者を労働者に限定するものではありません。事業主側からの申立も可能ですので、職場のトラブルを簡易、迅速、低費用に非公開で解決するあっせんの制度をご活用ください。なお、あっせん委員は公正中立な立場であっせんに臨み、申立人を弁護するという立場ではないことも併せてご理解ください。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」にあっせん申立をして受理されていれば、その後和解するに至った場合には大体申し立て内容の通りになるのでしょうか。
あっせん申立をした文書の内容は、センター長承認を経て被申立人に送付されます。しかし、あっせんの場において和解する場合であっても、必ず申立の通りになるということではありません。あっせん委員は申立人と被申立人双方の主張を聞いたうえであっせん案を提示しますが、初めの申立から申立人と被申立人が歩み寄るような内容で和解に至るケースも多く、また、申立人と被申立人両者の主張を聞くことによって、あっせん委員が専門家として、和解案が妥当なものかどうかを判断するというプロセスが、あっせんの重要な要素となっています。
「社労士会労働紛争解決センター茨城」にあっせんの申立をする場合には、弁護士や特定社会保険労務士に代理人を頼まなければいけないのでしょうか。
労働局や社労会労働紛争解決センターにあっせんの申立をする場合、弁護士や特定社会保険労務士に代理人になってもらうことはできますが、申立にあたって必ず代理人がいなければならないというものではありません。茨城県社会保険労務士会が運営している「社労士会労働紛争解決センター茨城」でのあっせん申立に関しては、代理人がいない場合の方が多いという状況です。ただし、労働紛争の解決のために労働関係に詳しい専門家に代理人になってもらうことについては、代理人の専門的な知識や経験を生かして紛争解決のための交渉等ができることや、紛争当事者の負担が軽くなる等のメリットがあります。
なお、あっせん期日には、代理人がいる場合であっても、できるだけ代理人だけではなく申立をした本人も出席する方が、合意の形成をするうえで望ましいといえるでしょう。
社労士会労働紛争解決センターに、もう一方の当事者に対し金銭の支払いによる和解を求める内容のあっせんの申立をするにあたり、申立人が特定社会保険労務士に代理人を依頼する場合は申立金額に120万円という上限があると聞きました。仮に申立てをする際の価額が上限金額以内であったとしても和解時の金額が上限の120万円を超えた場合には、既に代理人になっていた特定社会保険労務士は代理人を辞任するか、弁護士との共同受任に変更しなければならないのでしょうか。
平成27年4月1日施行の第8次社会保険労務士法改正により、社労士会労働紛争解決センターにあっせんの申立をする場合に特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限は120万円となり、120万円を超える場合には弁護士との共同受任が必要とされています。
しかし、ご質問の場合のように、厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において紛争の目的価額が上限の金額である120万円以内であって、交渉を行った結果和解金額が120万円を超えるような場合は、申立において単独で代理人となっていた特定社会保険労務士はそのまま和解契約締結まで単独で代理人となることができます。
社労士会労働紛争解決センターへのあっせんの申立に際して特定社会保険労務士が代理人になる場合は、申立金額に120万円という上限があるそうですが、代理人を頼まずに申立者本人のみで申立を行う場合には、申立金額の上限はありますか。
ご質問のように、社労士会労働紛争解決センターに、特定社会保険労務士を代理人とせずに、本人があっせんの申立を行う場合、申立金額に上限はありません。
120万円の上限額は、社労士会労働紛争解決センターに特定社会保険労務士を代理人としてあっせんの申立を行う場合の規制(120万円を超える場合には弁護士との共同受任が必要)となっています。
個別労働紛争において、裁判外紛争解決手続(ADR)でのあっせんの申立を、労働者本人ではなくご家族の方等が行う場合、特定社会保険労務士はそのご家族の方の代理人になれますか。また、特定社会保険労務士が裁判外紛争解決手続において代理人となっている場合、その特定社会保険労務士の都合でその代理人業務を他の人に代理させることはできますか。
ご質問のような、労働者本人以外の方、例えば労働者の家族や、労働者が死亡した場合の相続人等が紛争当事者となる紛争については、特定社会保険労務士が行うあっせん代理業務の対象とはなりません。
特定社会保険労務士の代理人業務をさらに代理させることについては、あっせん代理業務について委任を受けた特定社会保険労務士が、他の者に当該業務を代理(復代理)又は代行させることは認められません。また、社会保険労務士法人(ここでは社員のうちに特定社会保険労務士がいる場合に限る)が受託したADRでの代理人としての業務を、その法人の使用人である特定社会保険労務士又は社員である特定社会保険労務士以外の者に代理させることはできません。
勤務する会社と労使トラブルになっているのですが、その会社の顧問社労士が特定社会保険労務士であれば、その社労士に個別労働紛争に関する裁判外紛争解決手続(ADR)について代理人になってもらうことはできますか。実は私はその社労士とは個人的に知り合いで、しかも会社の顧問社労士なので、その会社の労使トラブルについては事件を把握しやすいのではないかと思います。
話が少し複雑になりそうなので、便宜上、会社とトラブルになっているご質問の労働者の方をA、特定社会保険労務士をB、会社をC社としましょう。
このような状況では、その特定社会保険労務士Bは、例えばこの労使トラブルの事件(同一の事件)の解決についてC社から代理人としての業務を依頼されている場合は、社会保険労務士法第22条第2項第1号の規定(双方代理の禁止)により、この事件について労働者Aからの依頼を引き受けることはできないこととされています。その業務を受けることにより、特定社会保険労務士を信頼して依頼した顧客の信頼を裏切り、社会保険労務士の品位を失墜させることになるからです。
なお、このように、事件の一方の当事者の代理人になっているにもかかわらず、同一の事件の他方の当事者の代理人になること(双方代理)については、社会保険労務士法の規定だけでなく、民法第108条により禁止されているところです。
ご質問では、労働者Aは、C社との間でトラブルの発生により利害が対立しており、一方、特定社会保険労務士Bは、同一の事件についてC社から今のところ依頼を受けてはいないのかもしれませんが、Bは顧問先としてC社から報酬を得ており、BとC社との間には信頼関係があります。そのため、特定社会保険労務士Bは、AとC社との間の労使関係において紛争対立が発生している状況下で、Aからの依頼を受けるべきではありません。同一の事件で特定社会保険労務士Bが顧問社労士としてC社から相談・依頼を受ける可能性が高く、その場合、双方代理の禁止の規定に抵触する危険性があります。
ここで挙げた説明の事例と同一ではなくても、類似のケースで問題となることもあり得ますので、特定社会保険労務士の立場としても、職業倫理上十分注意が必要です。
当社が労働組合と団体交渉を行う際に、当社の顧問社労士に同席してもらうことや、団体交渉の席上で労働者側代表に対し社労士から直接意見してもらうようなことは可能でしょうか。
社会保険労務士は労働法と労務管理等を専門とする国家資格者であり、ご質問のようなケースでお役に立てることもあると思います。ただし、労使間の交渉事などにおいて社会保険労務士が依頼者の代理人となれるのは、個別労働紛争における労働局のあっせんや社会保険労務士会が運営する「社労士会労働紛争解決センター」でのあっせんの場に特定社会保険労務士が立ち会う場合等に限られています。
したがって、労働組合と事業所との集団的な労使関係について交渉を行う場合において、社会保険労務士が当事者の一方の代理人となることはできませんが、同席して依頼者とともに交渉すること、あるいは依頼者に指導・助言等をすることは可能です。例えば会社側に依頼されて社会保険労務士が団体交渉に同席する場合、社会保険労務士が処分権を持つ代理人として直接相手方に対し意思表示することはできませんが、会社側に対して助言等を行うことはできるということになります。
社会保険労務士が当事者の委任を受けて労使の団体交渉に同席する場合、代理権がないこと以外に注意すべきことは何でしょうか。
社労士が労使の団体交渉に出席する場合、団体交渉の冒頭において、社労士として出席するものであり、代理行為を行わないことを明確に表明するとともに、適正な労使関係を損なう危険性がある以下のような行為をしないようにしなければなりません。
①挑発的な言動を示す行為
②不当労働行為を示唆する行為
③労使双方が対立する論点について、一方の論拠にのみ基づく公平性を欠いた発言をする行為
社労士が会社役員又は労働組合役員ということもあり得ると思いますが、その場合、その社労士は、その所属する会社の労使協議や団体交渉に出席し、労働法の知識を活用して交渉に参加することはできますか。
会社と労働組合との交渉時に、社労士が会社側役員や労働組合の組合員として出席する場合については、制限はありません。
ただし、社労士が労使の団体交渉に出席する際に、その団体交渉に出席することを目的として事業所に雇用されたり会社役員になったりするのは、適正な労使関係を損なう行為として望ましくない場合があり、会則に基づく注意勧告の対象になることがあります。
社会保険労務士に仕事を依頼する場合、ある程度料金は決まっていますか? 例えば、労働者を1人雇い入れた際の労働・社会保険関係手続をする、あるいは就業規則を作ると〇〇円など、定価のようなものはあるのでしょうか。
以前は業務の種類に応じて全国社会保険労務士会連合会が定める報酬基準がありましたが、社会保険労務士法の改正により社会保険労務士の報酬基準は廃止され、現在は、社会保険労務士の報酬については自由化されています。そのため、業務の引き受け方(スポット業務、顧問契約等)や報酬の設定等については、社会保険労務士により異なります。
社労士事務所の中には、報酬額の概要をホームページ等で明示しているところもあります。報酬の額は、依頼された業務の内容等により異なってくることにもなりますので、依頼時に社会保険労務士から説明を受けるとともに、よく打ち合わせをするようにしましょう。
社労士が顧客と契約する際に、あらかじめ業務に関して価格を明示する必要はありますか。
社労士が社会保険労務士法第2条第1項各号に定められた労働・社会保険関係書類の作成、提出代行、事務代理及び相談・指導等の業務並びに法第2条の2の補佐人業務を行う場合は、社会保険労務士法施行規則第 12 条の 10(報酬基準の明示義務)に従い、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を明示することとされています。
社労士は、業務を引き受ける際の報酬基準について依頼者に対して丁寧に説明することにより、業務の受任後に報酬に関するトラブルが生じることのないよう対応しなければなりません。
社労士は、社労士に対し仕事を依頼しようとしている人から相談を受けた際に、場合によっては価格を吊り上げてもよいでしょうか。価格が高いか安いかを判断するのは依頼者であり、条件が合わなければ依頼者の方から断るのも自由なので、社労士側としても自由に価格を提示したいのですが。
ご質問のような、依頼者によって価格を吊り上げるような行為をするべきではありません。社会保険労務士法施行規則第12条の10により、社会保険労務士又は社会保険労務士法人は、社会保険労務士法第2条第1項各号に掲げる事務並びに法第2条の2第1項に規定する出頭及び陳述に関する事務事務を受任しようとする場合には、あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならないとされています。ご質問のように価格を吊り上げようとすると、報酬の基準を明示することが困難になることが容易に想像でき、また、報酬額も公序良俗に反する内容になる危険性があるため、社会保険労務士に対する信頼を失わせるものと言えます。
社労士には社労士しかできないことになっている独占業務がありますが、報酬を得なければ、社労士でなくても開業社労士が行うのと同様に労働・社会保険関係の手続業務を行ってもいいのでしょうか。
社労士でない者が他者の求めに応じ社労士業務(社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係手続業務)を行うと、例え無料であっても「業として行っている」と判断され、社会保険労務士法違反として法に定める罰則が適用されることがあります。国家資格者である社労士は、全国社会保険労務士会連合会が発行する「社会保険労務士証票」と、所属する都道府県社会保険労務士会が発行する「社会保険労務士会会員証」を携帯していますので、ご相談される際には必ず確認してください。
また、不審な点があれば、社会保険労務士会又は連合会までお問い合わせください。
例えば税理士事務所やコンサル会社等に社労士がいる場合、その事務所やコンサル会社に社労士業務を依頼できますか?
社労士以外の他士業の事務所やコンサルティング会社等が社労士の業務(社会保険労務士法第2条第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係手続業務)を行うことは社会保険労務士法により原則として禁止されています。また、他士業の事務所やコンサルティング会社等の下請けのような形で社労士が業務を引き受けることもできません。
「他士業の事務所やコンサル会社等に社労士がいる場合」としては、その事業所に勤務社労士がいる場合が挙げられますが、その場合は、その社労士はその事業所の内部の事項、例えばその事業所の従業員の方についての手続等の業務しか行うことができません。
それ以外に考えられるのは、例えばその事業所と同じ建物の中や近隣に開業社労士が事務所を設置している場合です。他士業の事務所やコンサルティング会社等に対し、たまたま社労士の専門分野に該当する事項についてお客様から相談や業務の依頼等があったような場合に、他士業の事務所やコンサルティング会社等が、そのお客様に開業社労士を紹介することもあり得ます。この場合は、紹介された開業社労士は、業務を引き受けるときは社労士事務所として引き受け、社労士が自分の名前でお客様と契約して社労士業務を行います。費用等の支払いについても、お客様はその社労士に直接支払います。また、税理士などの他士業の事務所やコンサル会社等で社労士の名称を使って広告、宣伝することや、社労士業務(社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる申請書等の作成、提出代行、事務代理、紛争解決手続代理業務、帳簿書類の作成等)を引き受けることは社会保険労務士法(第26条、第27条)違反となるため、看板などの表示やホームページ等で宣伝を行う場合にも、税理士事務所やコンサルティング会社等と社労士事務所が混同されないよう、それぞれの事業所や事業内容について明確に区分することが必要です。
他士業の資格とダブルライセンスの場合、例えば、一人の税理士が社会保険労務士の資格も持ち、税理士として、また、開業社会保険労務士(「勤務登録」や「その他登録」は不可)として税理士会及び社会保険労務士会に登録している場合はそれぞれ税理士事務所と社会保険労務士事務所を設置して業務を行うことができ、事務所の所在地が同一であることもあり得ますが、そのような場合でも、事務所はそれぞれ「別の士業の事務所」という扱いになります。
他士業の事務所やコンサル会社、サービス会社等が広告、宣伝や営業活動等を行って社労士に業務を依頼したい人を集め、社労士を紹介するような営業代行業務を行うことについては、問題がありますか?
ご質問のような場合、社労士業務の契約そのものは利用者と社労士が直接締結しているとしても、実質的にサービス会社等が顧客から社労士業務を受託し、その業務を社労士に再委託する形となると思われます。社労士が業務を行って得た報酬の一部が営業代行を行う事業所に入ることや、表面的にはそのようなお金の動きがなくても紹介元が何らかの利益を得ていることも考えられます。
たまたま社労士の知人や取引先等から顧客を紹介されるようなケースとは異なり、社労士又は社労士に似た名称を使うなどして顧客を集め、社労士と顧客との間に立って契約の便宜を図ることにより利益を得るような行為は社会保険労務士法により禁止されています。営業代行サービス会社等が営業活動をするにあたって、口頭、書面等で実際に業務を行う社労士や社労士法人の名義を使用することも社会保険労務士法違反となります。
社労士業務に関して社労士以外の事業所が介入するような事業活動は問題となることが多く、注意が必要です。不審な点がありましたら、社会保険労務士会又は連合会までお問い合わせください。
社会保険労務士は、その業務を社会保険労務士事務所以外の事業所等と提携して行うことはできますか。
社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人ではない、例えばコンサルティング会社等の事業所が社会保険労務士の独占業務である労働・社会保険関係の手続業務を社会保険労務士と提携して行うことはできません。最終的に業務についての契約を社労士と顧客が直接締結して、報酬も顧客から社労士に直接支払われている場合であっても、原則として社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人でない事業所が、業として社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号の労働・社会保険関係書類等の作成及び提出代行業務を引き受けることはできません。このことはコンサル会社等の代表者が社会保険労務士であったとしても同様で、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の事業所の名義で、労働社会保険諸法令に基づく申請書の作成や提出等を受託することはできません。
例えば障害年金等の公的年金やその他社会保険・労働保険関係諸手続、中小企業の経営に役立つ雇用関係助成金申請等の業務について、社労士事務所以外の一般の事業所等と社労士事務所との間で「タイアップして業務を行う」、「パートナーシップを組む」等の業務提携の提案は、実際には違法となる危険性があります。一般の企業等で活用されているようなビジネスの形態が、社労士業務には適用させることができない場合があり、慎重な対応が求められます。
当社はいろいろな中小企業とお付き合いがあるのですが、あらかじめ社労士と申し合わせをして社労士を必要としている事業所に社労士事務所を紹介し、社労士事務所からそれに対し一定額の「紹介料」を支払ってもらうようなことは問題ないですか。顧客を紹介される社労士事務所にとっても、紹介料をもらう当社にとってもよい話だと思うのですが。
ご質問のような行為は社会保険労務士法第23条の2(非社労士との提携の禁止)に抵触することになります。非社労士が社労士と顧客との間に立って契約の成立の便宜を図るような行為は禁止されています。社労士が知人や取引先から顧客を紹介されるような場合は該当しませんが、社労士ではないのに社労士の名称を使用し、あるいは「紹介」と称していても実質的に他人からの求めに応じて労働・社会保険関係手続業務を引き受けるなどして常態的に違法行為を行っている者のあっせん行為に対して謝礼やその他実質的な利益の授受がある場合は問題とされ、これを利用しようとする社労士は非難されることになります。また、現実に顧問契約等の契約関係が成立していなくても違法とされることがあります。不適切な行為を行う事業所の介在により社労士の中立性が損なわれる危険性もあります。
社労士側としては、上記のようなあっせん行為について申し出をされても受諾の意思表示をしなければ違法とはなりませんので、危ない話はきっぱりと断ることが肝要です。
例えば「就業規則作成」や「助成金」等の社労士業務について、「専門家によるサービスの提供」などの形で社労士ではない業者が商品化して一般の事業所等に営業活動を行い、成約した場合には営業活動を行う業者が社労士をお客様に紹介する、そして紹介された社労士がお客様と契約して実際に業務を行い、顧客から社労士に支払われた顧問料等の料金の一部を、営業活動を行う業者に支払うという紹介ビジネスは問題ありますか。
社労士業務について顧客と社労士が直接契約している場合でも、ご質問のように、実態として営業活動を行う業者と社労士、顧客の3者間の契約になっていて、社労士の報酬の一部が紹介者に支払われるような取引の形態は、社会保険労務士法に違反することになります。社労士側は社会保険労務士法23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)に違反します。また、営業活動を行った業者は社会保険労務士法27条(業務の制限)に抵触することになります。社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、社労士業務(社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務)を業として行うことはできません。
社労士業務の中の特定の業務、例えば障害年金について、社労士が常駐する「障害年金相談センター」や「支援センター、申請センター、サポートオフィス」を設置し、そこで引き受けた障害年金受給手続代行業務を社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人に委託し、受託した社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人が障害年金受給手続代行の実務を行うような方法を取ることは可能でしょうか。
ご質問のように、開業社会保険労務士や社会保険労務士法人がその事務所名と異なる事業所の名前を使って社労士業務を引き受けるような行為は、社会保険労務士法に抵触するため、行うべきではありません。
例えば障害年金について「障害年金相談センター」や「支援センター、申請センター、サポートオフィス」等を設置し、そこに社会保険労務士がいたとしても、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の団体、事業所で社会保険関係手続書類の提出代行業務を引き受けることはできません(社会保険労務士法第2条第1項第1号、第2号、第27条)。また、開業社会保険労務士や社会保険労務士法人の社員はその業務を行う事務所を複数設置することはできません(社会保険労務士法第18条第1項、第2項)。
社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人側としては、社会保険労務士業務を社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人でない事業所から受託して行うことはできません(社会保険労務士法第23条の2)。
社会保険労務士の業務は国が法律で定めた業務であり、社会保険労務士は、定められた分野において独占的に業務に従事することが認められています。そのため、業務の引き受け方については厳格な扱いになっていることをご理解いただきたいと思います。
NPO法人や一般社団法人のような非営利の団体であれば、社労士業務に属する事項、例えば障害年金や助成金について一般の方から相談を受け、相談内容に応じて実際に労働・社会保険関係手続代行業務を行う社会保険労務士を紹介するような活動をすることができますか?
非営利の法人であるNPO法人、あるいは一般社団法人だから利益を上げてはいけないということではないのですが、営利企業であっても一般社団法人やNPO法人のような非営利の法人であっても、依頼人と社会保険労務士の間に入って利益を得るような行為は禁じられています。具体的には、例えば紹介料や手数料を取って社会保険労務士に顧客を紹介するような行為は社会保険労務士法違反となります。また、仮にこのようなお金の動きはなくても、実態として第三者である団体が顧客と社会保険労務士の間に入って三者間契約のような形で利益を得ている場合は、社会保険労務士側は社会保険労務士法23条の2(非社労士との提携の禁止)違反、団体側は社会保険労務士法27条(業務の制限)違反とされることになります。
社会保険労務士の業務について顧客と社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人の間に第三者である業者等が介在し、社会保険労務士が第三者から業務のあっせんを受けるような行為は職業倫理上問題があるとされています。社会保険労務士の業務は国が法律で定めた業務であり、社会保険労務士は、法律で定められた分野において独占的に業務に従事することが認められています。それは、プロフェッションとしての倫理(職業倫理)を伴うものであり、社会保険労務士の業務の引き受け方についても、通常のビジネスとは異なる規制があることに注意が必要です。
例えば社労士事務所が、ある事業所から給与計算業務を含む各種業務を引き受けた場合、給与計算業務については、社労士事務所ではない別の給与計算を専門に行う会社に再委託することはできますか。
ご質問のような扱いは可能です。ただし、社会保険労務士法に規定された労働・社会保険関係の各種書類の作成、手続き業務は、社会保険労務士事務所ではない給与計算会社が行うことはできないので、業務の線引きを明確にしなければなりません。
また、給与計算業務を行うにあたり、業務を引き受けた社労士事務所と給与計算事業所で個人情報等のデータを共有することもあり得ることから、業務の再委託やそれに伴う個人情報の取扱い等についての事情を顧客に説明し、承諾をもらうことが、トラブル回避のために必要となります。
ある会社が、自社の従業員の労働・社会保険関係諸手続きを子会社に受託させるなど、その会社の企業グループ内の他社が社労士業務(1・2号業務)に該当する業務を処理しても問題はありませんか。
ビジネスモデルとして、社内のある部門を分社化し、企業グループ全体で効率化や競争力の強化を図るような手法はよく見られると思いますが、自社の従業員の労働・社会保険関係手続業務を自社以外に行わせるということになると、それがグループ会社や親子会社である場合であっても、別の法人は社会保険労務士法第27条において「他人」に該当します。そのため、例えばシェアードサービス等によりグループ会社の労働・社会保険関係の書類作成や手続代行を一括して一つの会社が受託する、あるいはグループ内で親会社の労働・社会保険関係手続きを子会社が受託するとした場合は、社労士しか行うことができない業務を一般の会社が受託したことになり、社会保険労務士法違反となります。その会社のスタッフの中に社会保険労務士がいたとしても、その会社が労働・社会保険関係手続業務のアウトソーシングを受託することはできません。
労働・社会保険関係手続のアウトソーシングについては、社会保険労務士事務所及び社会保険労務士法人以外の一般の企業等が引き受けることはできないことにご注意ください。
当社は金融機関であり、お客様から年金に関する相談を受けることもあるのですが、顧客から公的年金の請求について質問や依頼等をされた場合、注意すべきことはありますか。
公的年金制度(国民年金、厚生年金保険等)の裁定請求関係手続の書類作成や提出代行は、開業社会保険労務士か社会保険労務士法人以外の者が業として行うことはできず、その金融機関等に勤務社労士が在籍していたとしても、その勤務社労士が一般のお客様の公的年金についての書類作成や提出代行を行うことはできません。例えお客様から手数料等を受け取らなくても、開業社会保険労務士や社会保険労務士法人以外の者が公的年金に関する書類作成や手続の代行を引き受けることはできません(社会保険労務士法27条)。
また、例えば金融機関等においてお客様から公的年金の手続等を引き受け、その後の年金事務所への提出等を社会保険労務士が行うことは、社会保険労務士法第23条の2(非社労士との提携の禁止)に違反します。公的年金についての関係手続の書類作成や提出代行は、年金の請求をするお客様が社会保険労務士に直接依頼し、手続を進めるようにしなければなりません。
労働保険事務組合は、社労士と同様の業務を行うことができますか?
労働保険事務組合は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法)第33条第1項」により、事業主の委託をうけて労働保険料の納付その他労働保険に関する事項を処理することが認められており、その範囲において社会保険労務士法第27条(業務の制限)の適用が除外されます。労働保険事務組合は、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された社労士業務の一部を行うことが認められている団体であるということができます。しかし、労働保険事務組合が行うことができる社労士業務は労働保険徴収法で規定された範囲内であり、労働保険事務組合は、社会保険関係の書類作成や労働保険の給付等に関する事務を行うことはできません。
労働保険事務組合には、中小企業事業主が労働保険事務組合に事務を委託することにより事業主が労災保険に特別加入できるようになる等のメリットもあるため、開業社労士が労働保険事務組合を設立し、事業を運営しているようなケースも見られます。また、社労士が単独で労働保険事務組合を設立することが困難な場合でも労働保険事務組合のメリットを活用できるように、都道府県によっては全国社会保険労務士連合会を通して都道府県社会保険労務士会を単位に厚生労働省の承認を受け、社会保険労務士が関与する「SR経営労務センター」等の労働保険事務組合が設置されていることもあります。茨城県では「SR茨城県労働保険事務組合」がそれに該当します。
開業社会保険労務士が労働保険事務組合に所属していることがありますが、その場合には、その労働保険事務組合で助成金関係の手続や社会保険関係手続を行うような内容の宣伝をすることはできますか? 労働保険事務組合で助成金や社会保険関係手続等を行うことはできませんが、実質的にその労働保険事務組合に所属している開業社会保険労務士が手続を行うのであれば実務としては可能だと思うのですが。
労働保険事務組合で厚生労働省の各種助成金の申請手続代行や厚生年金保険、健康保険等社会保険の各種書類作成や手続代行業務を行うことはできず、開業社会保険労務士が労働保険事務組合の構成員になっている場合は、各種助成金や社会保険関係手続については、その開業社会保険労務士が設置する社会保険労務士事務所で行わなければなりません。労働保険事務組合の業務案内チラシ、ホームページ等で各種助成金や社会保険関係手続を行う旨の宣伝を行って業務を引き受けることは、社会保険労務士法第27条(業務の制限)に抵触することになります。
労働保険事務組合に所属する開業社会保険労務士の側としては、労働保険事務組合で助成金や社会保険関係手続についての業務案内を行い、実質的な業務を社会保険労務士が引き受けるという行為は社会保険労務士法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)に抵触するため、助成金や社会保険関係手続などについては社会保険労務士事務所として業務案内や宣伝を行うようにし、労働保険事務組合と提携して業務を行っているような誤解を招く表現は避けなければなりません。
行政書士が社会保険労務士の業務を行うことができる場合はありますか?
一人の行政書士が社会保険労務士の資格も持ち、行政書士として、また、開業社会保険労務士(「勤務登録」や「その他登録」は不可)として行政書士会及び社会保険労務士会に登録しているというダブルライセンスの場合はそれぞれ行政書士事務所と社会保険労務士事務所を設置して業務を行うことができます。ここではそのようなケースは除いてお答えします。
行政書士と社会保険労務士はそれぞれ別の国家資格であり、扱う業務も異なります。ただし、社会保険労務士制度は、「労働社会保険関係の法規に通暁し、適切な労務指導を行い得る専門家」の制度として、昭和43年に制定、施行されたものであり、社会保険労務士法第2条の社会保険労務士の業務に規定されている同条第1号の申請書等作成の業務については、社会保険労務士法が制定される前は行政書士の業務分野でした。
そのため、社会保険労務士法が施行された際に、特例として社会保険労務士法施行(昭和43年12月2日)の際引き続き6ヵ月以上行政書士会に入会している行政書士は、社会保険労務士の資格を有することとされ、社会保険労務士法の施行の日から1年以内に免許申請を行えば社会保険労務士の資格を得られたという経緯があります。また、同時に行政書士の資格で労働社会保険諸法令に基づく書類の作成事務及び帳簿書類の作成事務ができるように規定が設けられました。そして、その後昭和53年の社会保険労務士法改正により、法第2条第1項第1号の2の提出代行権が社労士の業務に加えられた際に、行政書士については、既得権として社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号に規定された書類等の作成業務を行うことが認められましたが、提出代行事務はできないこととされました。
さらに、昭和55年4月23日に成立した行政書士法の改正(行政書士法の一部改正及び社会保険労務士法の一部改正、昭和55年法律第29号、昭和55年4月30日公布、同9月1日施行)に伴い、昭和55年8月末日現在行政書士会の会員である行政書士以外は、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号に規定された書類作成業務もできないことになりました。言い換えると、昭和55年9月1日以降に行政書士会会員となった行政書士については、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号の労働・社会保険関係書類等の作成及び提出代行業務を行うことはできません。
したがって、昭和55年8月末日の時点で行政書士であり、しかも現在まで継続して行政書士である場合に限り、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係の「書類作成」はできますが、その場合であっても同条第1項第1号の2に規定された「提出代行」(申請書等の提出に関する手続を代わってする事務)はできないという扱いになります。
弁護士であれば社会保険労務士の業務を行うことができますか?
弁護士は、社会保険労務士の業務を行うことができます。それには二つの意味があり、まず、弁護士が行う「法律事務」は、法律に規定する事項に関連する事務全てを包含するものであることから、弁護士であれば、弁護士として社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された社会保険労務士の業務を、法令に基づく正当な行為として行うことができます(弁護士法第3条)。ただし、社会保険労務士が社会保険労務士法第2条第1項第1号の2に規定された「提出代行」(申請書等の提出に関する手続を代わってする事務)の諸手続をする場合に添付書類を省略できる「社会保険労務士法17条の付記」の扱いについては、弁護士として手続業務を行うのであれば、適用されません。
もう一つは、弁護士であれば、無試験で都道府県社会保険労務士会に社会保険労務士として登録することができます。
実際に弁護士が社会保険労務士の業務を反復継続して行っているケースは少ないと思われますが、弁護士であっても、社会保険労務士の業務に関与するのであれば、社会保険労務士の専門分野である労働・社会保険関係手続等や企業の労務管理等について、会員の指導や研修等を行っている都道府県社会保険労務士会の会員になり、社会保険労務士のコミュニティに参加することによる実務上のメリットはあると考えられます。
茨城県には水戸と土浦にそれぞれ「街角の年金相談センター水戸」、「街角の年金相談センター土浦」という公的年金についての相談窓口があるそうですが、「街角の年金相談センター」とはどのような機関ですか?
「街角の年金相談センター」(窓口数等の規模により「オフィス」という名称のこともあります)は、平成22年1月に設立されました。当時は平成21年12月31日をもってそれまで公的年金制度を担当していた社会保険庁が廃止され、平成22年1月1日より日本年金機構が設立されるなど、公的年金制度において大きな情勢の変化があった時期です。そのような中で、全国社会保険労務士会連合会への業務委託の要請を受けて、街角の年金相談センターは、日本年金機構から委託を受け、社会貢献に関する事業として全国社会保険労務士会連合会が運営し、今日に至っています。具体的な業務は、年金制度や年金請求に関する相談、年金の裁定請求等に関する届出書等の受付、点検等であり、手数料やサービス料等は一切かかりません。社会保険労務士会では、街角の年金相談センターに相談員として社会保険労務士を派遣し、関係団体として連携を取って質の高いサービスの提供に努めています。
「〇〇障害年金相談センター」や「申請センター」「サポートセンター」という事業所を見かけたのですが、そこは「街角の年金相談センター」と関係した機関なのでしょうか。
「〇〇年金相談センター」や「〇〇年金センター」「申請センター」「サポートセンター」と称する団体等が他にあったとしても、全国社会保険労務士会連合会や都道府県社会保険労務士会が関与して社会貢献事業を行っているのは「街角の年金相談センター」だけです。
社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人は業として国民年金、厚生年金保険についての相談を受け、独占業務として手続を代行することができますが、現在少なくとも県内に「〇〇年金相談センター」や「〇〇年金センター」「申請センター」「サポートセンター」という名称の社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人は存在しません。例えば「障害年金相談センター」等の名称を使用して、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の事業所が公的年金関係手続の代行を行うことは、例えそこに社会保険労務士が在籍していても、社会保険労務士法違反となります(社会保険労務士法第2条第1項第1号、第2号、第27条)。また、社労士業務を行うにあたり開業社会保険労務士は複数の事務所を設置することができず、社会保険労務士法人の社員は、所属する法人以外に事務所を設置することはできません(社会保険労務士法第18条第1項、第2項)。そのため、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人は、複数の屋号を用いて社労士業務を行うことはできません。
開業社会保険労務士は、1か所の事務所についてその名称及び所在地が登録事項とされています(社会保険労務士法第14条の2第2項)。また、社会保険労務士法人の社員が自己または第三者(ここでは例えば「〇〇障害年金相談センター」等)のために社会保険労務士法人の業務の範囲に属する業務を行うことは禁止されています(社会保険労務士法第25条の18)。開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が、社会保険労務士名簿(全国社会保険労務士会連合会)に登録された事務所名、法人名と異なる事業所の名称を使って社労士業務を引き受けることは社会保険労務士法違反となります。
顧客を誘引するための手段として街角の年金相談センターや公共機関と類似した名称を使った違法な事業所等にご注意ください。