社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
社会保険労務士が業務に関し違法行為や不正等の不適切な行為を行った場合に処分等をされることはありますか。また、不適切な行為としては、どのようなものがありますか。
社会保険労務士には、専門家としての知識や立場を悪用して不正を行わないように、守るべき義務等が定められています。その概略については下記のようになります。
①不正行為の指示等の禁止
社会保険労務士は、依頼を受けた企業等に不正行為について、指示をしたり、相談に応じたりしてはいけません。例えば、不正に保険給付を受けること、不正に保険料の賦課又は徴収を免れること、労働基準法、労働安全衛生法、雇用保険法、厚生年金保険法、健康保険法等に違反する行為を行うこと等は不正行為となります。
不正行為について、不正の具体的な方法を教えること、法令違反の行為の相談相手となること、法令違反の行為に肯定的な回答をすること等は、不正行為についての「指示」や「相談」とみなされます。
②信用失墜行為の禁止と罰則について
社会保険労務士は、社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはいけません。社会保険労務士法や労働社会保険諸法令に違反する行為がこれに該当するのはもちろんですが、刑法上の犯罪行為その他非行についても該当します。
不正行為等を行った場合、社会保険労務士会からの注意勧告や処分、労働局等の調査を経て厚生労働大臣による業務停止や失格等の懲戒処分、司法手続により刑事罰(懲役・罰金)が科せられることがあり、社会保険労務士の業務を行うことができなくなる場合があります。
③情報発信の際に配慮すべき観点
ITの進歩、発展により、現代社会は様々な情報が氾濫する状況下にありますが、社会保険労務士は、その業務について、インターネット上などで、誇大な広告、利用者に過度の期待を持たせるような表現、その他利用者をあおるような不適切な表現を行わないように注意しなければなりません。
不適切な表現としては、例えば、助成金受給や年金受給手続代行について、「受給率〇〇%、成功率〇〇%」等の文言を使って利用者の期待をあおるようなことや、「成功報酬」等の言葉を用いることは、公的な制度において要件を満たすことにより支給が決定され、逆に要件を満たさなければ支給されない各種給付にはふさわしくありません。また、労働・社会保険関係の手続きで社会保険労務士が代行することの結果を「成功」(成功しなければそこには「失敗」があるということになります)という表現をすることは適切ではないとされています。「100%〇〇の味方です」や「お客様第一主義」といった、公正さについて疑問を抱かせるような表現、「社会保険料削減」等の労働者の福祉の向上に反する文言や、使用者がいたずらに労働条件を引き下げることを促すような表現等も避けなければなりません。
④社会保険労務士の社会的責任について
社会保険労務士は、法によりその資格を付与され、公の信用力を背景に、定められた分野において独占的に業務に従事することが認められています。それは、社会保険労務士に対する社会の信頼に基づくものであり、社会保険労務士にはそれに応える社会的な責任があります。高度な専門性を持つ国家資格者として、社会保険労務士は、高い職業倫理をもって業務に向き合わなければならないことを常に認識しなければなりません。
社会保険労務士が行政機関等で指導等の業務をすることや、年金事務所での相談業務等を行うことがあるそうですが、業務を遂行する能力があれば、そこで社会保険労務士が自分の事務所の宣伝等を行い、場合によっては相談に来られたお客様を自分の事務所に誘引しても問題ないでしょうか。
行政機関等に相談に来られたお客様に対して、そこで業務を行う社労士が自分の事務所を宣伝し、お客様を自分の事務所に誘引するようなことをしてはいけません。ご質問のような場合、お客様は例えば「労働基準監督署」や「年金事務所」等に対し相談をしているので、その信頼を裏切るようなことをしてはいけないのは当然のことです。また、行政機関等の職員には、国家公務員法第100条や地方公務員法第34条により、守秘義務が課されています。行政機関来訪者に関する情報を外部の社労士事務所等に漏らすのは違法行為です。
また、社会保険労務士法第22条で「社会保険労務士は、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない」こととされています。相談等をした当事者の保護、社会保険労務士の職務遂行上の公正の確保、社会保険労務士の品位の保持という観点から、社会保険労務士の職責に反する行為を行うこととなる事件の処理をすることは禁止するという扱いになっているのです。
社会保険労務士は、依頼された仕事を断る自由が制限されているそうですが、どういう意味なのでしょうか。社会保険労務士は仕事を依頼されると断れないということでしょうか。
開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない(社会保険労務士法第20条)こととされていますが、仕事の依頼を断ることができないということではありません。開業社会保険労務士は、社会保険労務士法により、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するため、その専門家としての資格を認められ、独占的に業務を行う特別な立場を与えられているので、その立場及び職責に鑑み、契約締結の自由が制限されているのです。
それではいかなる場合に依頼を拒否できる「正当な理由」といえるかについては、社会保険労務士の公的な立場、職責のほか、業務運営の実情、依頼された事件の内容等を考慮する必要がありますが、例えば、依頼された事件が法令に違反するものであるとき、社会保険労務士の業務の範囲を超えるものであるときはもちろん、依頼された事務の内容からみて依頼者の希望の日時までに処理することが困難な場合等のように、依頼を拒む理由に故意性がなく、かつ、法律的、時間的、物理的にみて依頼に応ずることが困難とみられる相当な理由があるときは、「正当な理由」があるものとされています。
なお、例えば開業社会保険労務士の経験が浅い、あるいは自分が不得意とする分野についての相談である場合には、なるべくその分野に堪能な他の社会保険労務士を紹介するように努めるべきでしょう。
例えば、ある企業と紛争状態にある者から、その企業の顧問社労士に対し、その企業の労務管理等について指導・助言した記録等の開示を求められた場合、その顧問社労士は直ちに記録等の情報を開示するべきでしょうか。
社労士の守秘義務に関してですが、刑事訴訟上の証言、労働委員会の証言、行政機関の依頼、本人の承諾がある等の正当な理由がある場合には情報を開示してよいということになります。しかし、ご質問の場合はそれには該当せず、本人(この場合顧問先企業の事業主)の許諾なしに情報を開示することはできません。
開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が、お客様に対するご案内として、具体的に助成金や障害年金等の受給金額をホームページ等で広告し、そこで例えば「障害厚生年金〇〇万円受給」等の表示、ご案内をしてもいいでしょうか。
受給例等に基づき受給できた金額を広告、宣伝するだけでは、その広告を見た方が過大な期待をすることになってしまうので適切とは言えません。
助成金や公的年金等の受給金額は申請する方の状況により異なることがあります。また、ご相談いただいても要件を満たさなければ受給できないことを明示するべきです。
開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が、お客様に業務をアピールするため、社会保険労務士会に登録した事務所名や法人名(例えば〇〇社会保険労務士事務所、社会保険労務士法人〇〇等)とは異なる屋号、例えば障害年金については「〇〇障害年金相談センター」、助成金については「〇〇助成金サポートセンター、サポートオフィス」等の屋号を使ってホームページ等で広告宣伝を行っても問題ありませんか。
開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が、登録された事務所名、法人名と異なる事務所名を使って社労士業務を引き受けることは社会保険労務士法違反となります。
「〇〇事務所」「〇〇相談センター」「サポートセンター」等の名称の如何にかかわらず、開業社会保険労務士は複数の事務所を設置することができず、社会保険労務士法人の社員は、所属する法人以外に事務所を設置することはできません(社会保険労務士法第18条第1項、第2項)。開業社会保険労務士は、1か所の事務所についてその名称及び所在地が登録事項とされています(社会保険労務士法第14条の2第2項)。また、社会保険労務士法人の社員が自己または第三者(ここでは例えば「〇〇障害年金相談センター」や「〇〇助成金サポートセンター」等)のために社会保険労務士法人の業務の範囲に属する業務を行うことは禁止されています(社会保険労務士法第25条の18)。
したがって、社会保険労務士業務を行う場合において、1か所の事務所について、社会保険労務士会に登録された事務所名以外の事務所名(屋号)で広告を行うということは、実際には存在しない事務所名で虚偽の広告を行っていることになります。社労士業務を行うにあたり虚偽・誇大広告等を行ってはいけません。
開業社会保険労務士が事務所の名称を、個人としての社会保険労務士と同じ名称、例えば「社会保険労務士〇〇〇〇(個人名)」としてもよいでしょうか。
事務所名が個人としての社会保険労務士と区別しにくいような名称の場合、顧客にとっては、業務を社会保険労務士事務所に依頼したのかどうかが判別しにくくなることがあり、不正を誘発する危険性が懸念されます。開業社会保険労務士の事務所名については、「事務所」であることがはっきりわかる名称にするようにお願いします。
例えば社労士が、社労士事務所以外の事業所、例えばコンサル会社が提案する勤怠管理に関連するアプリケーションソフトウェア等の広告物の中で、社労士の名前で適切な労務管理の重要性について意見を載せるようなことは問題ありませんか。
ご質問のように、社労士以外の業者の事業の広告物の中で、社労士が専門家として意見を掲載するようなことは、その内容が職業倫理上適切なものであれば問題ないでしょう。社労士には、業務に関する法令及び実務に精通していることはもちろん、職業人としての品位の保持と、公正な立場の維持、職務遂行における誠実さが求められています(社会保険労務士法第1条の2)。社労士として、職務の内外を問わず、社労士に寄せられる社会の期待と信頼に相応しい身の処し方を行うようにしなければなりません。
なお、例えば広告物の中で、社労士以外の業者と社労士が提携して社労士業務を行うように読み取れるような内容や、社労士以外の事業所と顧客、社労士との三者間で社労士業務について契約を行うような宣伝をしている場合は、社会保険労務士法第23条の2(非社労士との提携の禁止)に抵触することになります。
例えば開業社会保険労務士が、社労士事務所以外の事業所で外部から引き受けた厚生労働省管轄の助成金やその他労働・社会保険関係各種手続業務の関係書類を預かって内容を確認し、提出代行印等を押印することによって社労士が業務を行った扱いにすることについては問題ありますか? 書類の内容を社労士が責任をもってチェックするのであれば実務上支障はないと思うのですが。
まず、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の事業所が厚生労働省管轄の助成金やその他労働・社会保険関係各種手続を他者から引き受けるということ自体が、社会保険労務士法第27条違反です。ご質問の事案については、社労士が他の事業所から顧客を紹介されるようなケースとは異なります。社労士の独占業務である労働・社会保険関係各種手続業務(1・2号業務)において、社労士以外の者に社労士の名義を利用させること(名義貸し)は社会保険労務士法第23条の2に違反することになります。社労士は、違反行為を直接、又は間接的に助長するようなことをしてはいけません。
もし、ある社会保険労務士事務所が顧客から社労士業務を引き受け、その後その社会保険労務士事務所が突発的な事件等により人員体制が不足するような事態となった場合には、引き受けた業務を他の社会保険労務士事務所に再委託することはできますか。
他士業の事務所が社労士業務(社会保険労務士法第2条第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係手続業務)を受託すること及びそれを社労士事務所に再委託することは禁止されていますが、ご質問のような場合に社会保険労務士事務所が他の社会保険労務士事務所に業務を再委託することについては禁止されていません。
ただし、顧客との信頼関係保持のためには、顧客から社労士業務を受託した社労士は、業務を他の社労士事務所に再委託することについて顧客に説明し、承諾を得る必要があります。