個別労働紛争の解決について、「社労士会労働紛争解決センター茨城」にあっせんの申立をすることにはどのようなメリットがありますか。

 社会保険労務士会が法務省の認証と厚生労働省の指定を受けて運営する民間のADR機関である「社労士会労働紛争解決センター」は、紛争当事者の一方からの申立に基づき、第三者である有識者(社会保険労務士、弁護士等)からあっせん委員を選任して紛争解決に向け取り組みます。あっせん委員は公正、中立の立場で申立てについて申立人や被申立人の意見等を聴取したうえで審議し、和解に向けたあっせん案を提示します。
 裁判等の他の紛争解決制度と比較したあっせんの特徴として主なものを挙げると下記のようになります。

手続きが簡単です。
 あっせんの申立てをしたい場合は、どのような事件なのかお知らせいただく必要がありますので、あらかじめ電話等で予約をしたうえで本会事務局にお越しください。事件の種類によっては「社労士会労働紛争解決センター」では扱うことができないことがあります。また、あっせん期日の場において、あっせん委員は申立人、被申立人双方から話を聞きますが、申立人と被申立人が直接顔を合わせることはありません。関係者のスケジュール調整により設定するあっせん期日には、申立人、被申立人に本会が指定する場所(茨城県社会保険労務士会館)にお越しいただきますが、それは通常1回で済みます。

短期間で済みます。
 申立てから通常1~3か月以内での解決を目指しています。それ以上の長期になるケースがまれにありますが、その原因としては、申立てに応じて話し合いをするかどうかについて被申立人の対応が決まるまでに時間がかかっている場合がほとんどです。

申立てにあたっての費用が抑えられます。
 社労士会労働紛争解決センター茨城では、申立についての手数料等はかかりません。ただし、関係書類を郵送する場合等の実費は別途かかります。

手続きはすべて非公開です。
 裁判は原則として公開ですが、社労士会労働紛争解決センターのあっせんについてはすべて非公開であり、あっせんの関係者以外に知られることはありません。また、あっせん委員を含め関係者には守秘義務が課せられています。

和解には民法上の和解契約の効力があります。
 申立人と被申立人双方の合意により和解した場合は、紛争の当事者及びあっせん委員の記名押印をした和解契約書を取り交わします。当事者双方に契約を守る義務が発生することになります。

 なお、あっせんの制度の注意点としては、以下の通りです。

あっせん期日への参加について強制力はありません。
 被申立人があっせんの申立についての話し合いを拒否した場合はそれで終了になり、あっせん期日を設定しても強制的に出頭させるような扱いはできません。

和解案についても強制力はありません。
 あっせん委員から提示されたあっせん案について、紛争当事者は拒否することができます。しかし、被申立人の側としては、考え方によっては、あっせんの申立をされたことが紛争解決の近道になるということができます。非公開の場で個別の事件について専門家であるあっせん委員の意見を直接聞くことができるという機会を活用し、あっせんの制度を紛争解決に役立てていただきたいと思います。

 「社労士会労働紛争解決センター茨城」のあっせん委員は、例えば事業所と労働者の間で紛争が起き、雇用の継続が不可能になった場合においても、その後それぞれの事業活動や生活があることを踏まえながら、労働法に関する専門知識や経験を生かして和解による解決を目指します。