行政書士が社会保険労務士の業務を行うことができる場合はありますか?

 一人の行政書士が社会保険労務士の資格も持ち、行政書士として、また、開業社会保険労務士(「勤務登録」や「その他登録」は不可)として行政書士会及び社会保険労務士会に登録しているというダブルライセンスの場合はそれぞれ行政書士事務所と社会保険労務士事務所を設置して業務を行うことができます。ここではそのようなケースは除いてお答えします。
 行政書士と社会保険労務士はそれぞれ別の国家資格であり、扱う業務も異なります。ただし、社会保険労務士制度は、「労働社会保険関係の法規に通暁し、適切な労務指導を行い得る専門家」の制度として、昭和43年に制定、施行されたものであり、社会保険労務士法第2条の社会保険労務士の業務に規定されている同条第1号の申請書等作成の業務については、社会保険労務士法が制定される前は行政書士の業務分野でした。
 そのため、社会保険労務士法が施行された際に、特例として社会保険労務士法施行(昭和43年12月2日)の際引き続き6ヵ月以上行政書士会に入会している行政書士は、社会保険労務士の資格を有することとされ、社会保険労務士法の施行の日から1年以内に免許申請を行えば社会保険労務士の資格を得られたという経緯があります。また、同時に行政書士の資格で労働社会保険諸法令に基づく書類の作成事務及び帳簿書類の作成事務ができるように規定が設けられました。そして、その後昭和53年の社会保険労務士法改正により、法第2条第1項第1号の2の提出代行権が社労士の業務に加えられた際に、行政書士については、既得権として社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号に規定された書類等の作成業務を行うことが認められましたが、提出代行事務はできないこととされました。
 さらに、昭和55年4月23日に成立した行政書士法の改正(行政書士法の一部改正及び社会保険労務士法の一部改正、昭和55年法律第29号、昭和55年4月30日公布、同9月1日施行)に伴い、昭和55年8月末日現在行政書士会の会員である行政書士以外は、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号に規定された書類作成業務もできないことになりました。言い換えると、昭和55年9月1日以降に行政書士会会員となった行政書士については、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号の労働・社会保険関係書類等の作成及び提出代行業務を行うことはできません。
 したがって、昭和55年8月末日の時点で行政書士であり、しかも現在まで継続して行政書士である場合に限り、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係の「書類作成」はできますが、その場合であっても同条第1項第1号の2に規定された「提出代行」(申請書等の提出に関する手続を代わってする事務)はできないという扱いになります。