社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
当社は金融機関であり、お客様から年金に関する相談を受けることもあるのですが、顧客から公的年金の請求について質問や依頼等をされた場合、注意すべきことはありますか。
公的年金制度(国民年金、厚生年金保険等)の裁定請求関係手続の書類作成や提出代行は、開業社会保険労務士か社会保険労務士法人以外の者が業として行うことはできず、その金融機関等に勤務社労士が在籍していたとしても、その勤務社労士が一般のお客様の公的年金についての書類作成や提出代行を行うことはできません。例えお客様から手数料等を受け取らなくても、開業社会保険労務士や社会保険労務士法人以外の者が公的年金に関する書類作成や手続の代行を引き受けることはできません(社会保険労務士法27条)。
また、例えば金融機関等においてお客様から公的年金の手続等を引き受け、その後の年金事務所への提出等を社会保険労務士が行うことは、社会保険労務士法第23条の2(非社労士との提携の禁止)に違反します。公的年金についての関係手続の書類作成や提出代行は、年金の請求をするお客様が社会保険労務士に直接依頼し、手続を進めるようにしなければなりません。
労働保険事務組合は、社労士と同様の業務を行うことができますか?
労働保険事務組合は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険徴収法)第33条第1項」により、事業主の委託をうけて労働保険料の納付その他労働保険に関する事項を処理することが認められており、その範囲において社会保険労務士法第27条(業務の制限)の適用が除外されます。労働保険事務組合は、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された社労士業務の一部を行うことが認められている団体であるということができます。しかし、労働保険事務組合が行うことができる社労士業務は労働保険徴収法で規定された範囲内であり、労働保険事務組合は、社会保険関係の書類作成や労働保険の給付等に関する事務を行うことはできません。
労働保険事務組合には、中小企業事業主が労働保険事務組合に事務を委託することにより事業主が労災保険に特別加入できるようになる等のメリットもあるため、開業社労士が労働保険事務組合を設立し、事業を運営しているようなケースも見られます。また、社労士が単独で労働保険事務組合を設立することが困難な場合でも労働保険事務組合のメリットを活用できるように、都道府県によっては全国社会保険労務士連合会を通して都道府県社会保険労務士会を単位に厚生労働省の承認を受け、社会保険労務士が関与する「SR経営労務センター」等の労働保険事務組合が設置されていることもあります。茨城県では「SR茨城県労働保険事務組合」がそれに該当します。
開業社会保険労務士が労働保険事務組合に所属していることがありますが、その場合には、その労働保険事務組合で助成金関係の手続や社会保険関係手続を行うような内容の宣伝をすることはできますか? 労働保険事務組合で助成金や社会保険関係手続等を行うことはできませんが、実質的にその労働保険事務組合に所属している開業社会保険労務士が手続を行うのであれば実務としては可能だと思うのですが。
労働保険事務組合で厚生労働省の各種助成金の申請手続代行や厚生年金保険、健康保険等社会保険の各種書類作成や手続代行業務を行うことはできず、開業社会保険労務士が労働保険事務組合の構成員になっている場合は、各種助成金や社会保険関係手続については、その開業社会保険労務士が設置する社会保険労務士事務所で行わなければなりません。労働保険事務組合の業務案内チラシ、ホームページ等で各種助成金や社会保険関係手続を行う旨の宣伝を行って業務を引き受けることは、社会保険労務士法第27条(業務の制限)に抵触することになります。
労働保険事務組合に所属する開業社会保険労務士の側としては、労働保険事務組合で助成金や社会保険関係手続についての業務案内を行い、実質的な業務を社会保険労務士が引き受けるという行為は社会保険労務士法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)に抵触するため、助成金や社会保険関係手続などについては社会保険労務士事務所として業務案内や宣伝を行うようにし、労働保険事務組合と提携して業務を行っているような誤解を招く表現は避けなければなりません。
行政書士が社会保険労務士の業務を行うことができる場合はありますか?
一人の行政書士が社会保険労務士の資格も持ち、行政書士として、また、開業社会保険労務士(「勤務登録」や「その他登録」は不可)として行政書士会及び社会保険労務士会に登録しているというダブルライセンスの場合はそれぞれ行政書士事務所と社会保険労務士事務所を設置して業務を行うことができます。ここではそのようなケースは除いてお答えします。
行政書士と社会保険労務士はそれぞれ別の国家資格であり、扱う業務も異なります。ただし、社会保険労務士制度は、「労働社会保険関係の法規に通暁し、適切な労務指導を行い得る専門家」の制度として、昭和43年に制定、施行されたものであり、社会保険労務士法第2条の社会保険労務士の業務に規定されている同条第1号の申請書等作成の業務については、社会保険労務士法が制定される前は行政書士の業務分野でした。
そのため、社会保険労務士法が施行された際に、特例として社会保険労務士法施行(昭和43年12月2日)の際引き続き6ヵ月以上行政書士会に入会している行政書士は、社会保険労務士の資格を有することとされ、社会保険労務士法の施行の日から1年以内に免許申請を行えば社会保険労務士の資格を得られたという経緯があります。また、同時に行政書士の資格で労働社会保険諸法令に基づく書類の作成事務及び帳簿書類の作成事務ができるように規定が設けられました。そして、その後昭和53年の社会保険労務士法改正により、法第2条第1項第1号の2の提出代行権が社労士の業務に加えられた際に、行政書士については、既得権として社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号に規定された書類等の作成業務を行うことが認められましたが、提出代行事務はできないこととされました。
さらに、昭和55年4月23日に成立した行政書士法の改正(行政書士法の一部改正及び社会保険労務士法の一部改正、昭和55年法律第29号、昭和55年4月30日公布、同9月1日施行)に伴い、昭和55年8月末日現在行政書士会の会員である行政書士以外は、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号に規定された書類作成業務もできないことになりました。言い換えると、昭和55年9月1日以降に行政書士会会員となった行政書士については、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び第2号の労働・社会保険関係書類等の作成及び提出代行業務を行うことはできません。
したがって、昭和55年8月末日の時点で行政書士であり、しかも現在まで継続して行政書士である場合に限り、社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係の「書類作成」はできますが、その場合であっても同条第1項第1号の2に規定された「提出代行」(申請書等の提出に関する手続を代わってする事務)はできないという扱いになります。
弁護士であれば社会保険労務士の業務を行うことができますか?
弁護士は、社会保険労務士の業務を行うことができます。それには二つの意味があり、まず、弁護士が行う「法律事務」は、法律に規定する事項に関連する事務全てを包含するものであることから、弁護士であれば、弁護士として社会保険労務士法第2条第1項第1号及び2号に規定された社会保険労務士の業務を、法令に基づく正当な行為として行うことができます(弁護士法第3条)。ただし、社会保険労務士が社会保険労務士法第2条第1項第1号の2に規定された「提出代行」(申請書等の提出に関する手続を代わってする事務)の諸手続をする場合に添付書類を省略できる「社会保険労務士法17条の付記」の扱いについては、弁護士として手続業務を行うのであれば、適用されません。
もう一つは、弁護士であれば、無試験で都道府県社会保険労務士会に社会保険労務士として登録することができます。
実際に弁護士が社会保険労務士の業務を反復継続して行っているケースは少ないと思われますが、弁護士であっても、社会保険労務士の業務に関与するのであれば、社会保険労務士の専門分野である労働・社会保険関係手続等や企業の労務管理等について、会員の指導や研修等を行っている都道府県社会保険労務士会の会員になり、社会保険労務士のコミュニティに参加することによる実務上のメリットはあると考えられます。