社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が社労士業務の中の特定の業務、例えば障害年金について、都道府県社会保険労務士会に登録された事務所名と異なる名称の「障害年金相談センター」や「支援センター、申請センター、サポートセンター、オフィス」等を設置して業務を行うことはできますか?
開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が、その事務所名、法人名と異なる事業所の名前を使って社労士業務を引き受けることは社会保険労務士法違反となります。
ご質問のような場合、仮に「〇〇障害年金相談センター」や「〇〇支援センター」「申請センター」等を設置し、そこの代表者等が社会保険労務士であったとしても、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所で障害年金(障害厚生年金、障害基礎年金等)の手続代行業務を行うことはできません(社会保険労務士法第2条第1項第1号、第2号、第27条)。また、「〇〇事務所」「〇〇相談センター」「社会保険労務士〇〇」等の名称の如何にかかわらず、開業社会保険労務士は複数の事務所を設置することができず、社会保険労務士法人の社員は、所属する法人以外に事務所を設置することはできません(社会保険労務士法第18条第1項、第2項)。
開業社会保険労務士は、1か所の事務所についてその名称及び所在地が登録事項とされています(社会保険労務士法第14条の2第2項)。また、社会保険労務士法人の社員が自己または第三者(ここでは例えば「〇〇障害年金相談センター」や「支援センター」等)のために社会保険労務士法人の業務の範囲に属する業務を行うことは禁止されています(社会保険労務士法第25条の18)。そのため、例えば「運営:〇〇社労士事務所、社会保険労務士法人〇〇」等の表記をしながら登録された社労士事務所や社会保険労務士法人の名称と異なる事業所名を使用し、「〇〇相談センター」等で社労士業務を引き受けるような宣伝は、誤解や混乱、契約上のトラブルの原因にもなります。また、行政区画の地名を冠した「〇〇年金相談センター」等の名称は、都道府県、市町村の公的機関等を詐称しているように見える場合があります。
社労士業務を行うにあたり「〇〇相談センターに相談しに行くと、そこで実際に業務を行うのは別の名称の社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人」というような品位を欠く手段で顧客を誘引することや、社会保険労務士事務所又は社会保険労務士法人でありながら、社労士業務について、都道府県社会保険労務士会に登録された事務所名や法人名と異なる名称の「〇〇相談センター」等を設置、運営することは、信用失墜行為であり、社会保険労務士法の規定に照らし適切ではないため、行うべきではありません。
社会保険労務士法人とは、どのようなものですか。
社会保険労務士法人は、社労士の業務を行うことを目的として、社労士が設立する法人です。平成15年4月1日施行の第6次社会保険労務士法改正により設立が可能となりました。社会保険労務士法人の設立にあたっては、定款の作成、認証、出資金の払込み、その他設立に必要な手続が終了したのち、その事務所の所在地において成立の登記をします。社会保険労務士法人の名称については、社会保険労務士法第25条の7により「社会保険労務士法人」の文字を使用することが義務付けられています。
社会保険労務士法人は、その成立のときに、社会保険労務士法人の事務所の所在地の都道府県社労士会の会員となりますが、成立の日から2週間以内にその事務所の所在地の都道府県社労士会を経由して「社会保険労務士法人設立届出書」を全国社会保険労務士会連合会に届け出なければなりません。 また、社会保険労務士法人は、その法人の社員である社会保険労務士とは別に法人会員として会費を納入しなければなりません。
なお、平成26年11月に可決、公布された第8次社会保険労務士法改正により、平成28年1月1日に、社員が1人の社会保険労務士法人(一人法人)の設立等を可能とする規定が施行され、それまで2人以上の社員による設立が要件となっていた社会保険労務士法人について、社員が1人でも社会保険労務士法人を設立することが可能となりました。
社会保険労務士法人は複数の事務所を設置できますか。
開業社会保険労務士と異なり、社会保険労務士法人は、その「主たる事務所」とは別に「従たる事務所」を設置することができます。ただし、社会保険労務士法人が事務所を設置する都道府県の社会保険労務士会に法人の社員として登録した社会保険労務士を事務所に常駐させなければならず、法人の社員である社会保険労務士が複数の事務所を兼務することはできないとされています。
また、それぞれの事務所を法人会員とみなして法人としての会費を納入しなければなりません。
社員が1人の社会保険労務士法人(一人法人)は複数の事務所を設置できますか。
社会保険労務士法人は、その「主たる事務所」とは別に「従たる事務所」を設置することができますが、その事務所には必ず社会保険労務士法人が事務所を設置する都道府県の社会保険労務士会において登録した法人の社員である社会保険労務士を常駐させなければなりません(勤務社労士やその他従業員だけでは不可)。そのため、社員が1人の社会保険労務士法人の場合は、1か所しか事務所を設置できないことになります。
社員が1人の社会保険労務士法人(一人法人)には「後継候補者」を定めておかなければならないそうですが、後継候補者には法的な義務等はありますか。
社員が1人の社会保険労務士法人(一人法人)の「後継候補者」には法的効力はなく、例えばその法人の債権債務等については相続人(遺族)が対象となります。
後継候補者の規定は、社員が1人である社会保険労務士法人の社員が亡くなるなどして業務を行うことができなくなった場合に、顧客が、これまでその社会保険労務士法人に委託していた業務をどうするかなど、対応に困ってしまうようなことを防止するための措置ということになります。その意味で、後継候補者は当然社会保険労務士でなければなりません。
社員が1人の社会保険労務士法人(一人法人)に「後継候補者」として社会保険労務士を定めておく場合、その一人法人の事務所がある都道府県の社会保険労務士会に登録した社会保険労務士でなければならない等の規定はありますか。
社員が1人の社会保険労務士法人(一人法人)の後継候補者は、社労士試験に合格しただけでなく、現に各都道府県の社会保険労務士会に登録している社労士でなければなりませんが、一人法人の後継候補者となる社労士は、当該一人法人の事務所が所在する都道府県以外の都道府県会に登録している社労士でもよく、また、開業でも非開業でも可とされています。
社会保険労務士法人の社員は、法人とは別に自分の事務所を持つことはできますか。
社会保険労務士法人の社員が、自らが社員となっている社会保険労務士法人とは別に社労士業務を行う事務所を設置することは、社会保険労務士法(第18条第2項)により禁止されています。
法人の社員である以上は法人の業務に専念することが要求され、法人との利害衝突を防止しなければなりません。社員には、競業禁止義務が課せられています。また、顧客の視点からは、ご質問のような場合を想定すると、業務を依頼した場合に社会保険労務士法人に依頼したのか個人の社会保険労務士事務所に依頼したのかがはっきりしなくなってしまいます。そのようなことは避けなければなりません。
一般企業に勤務登録している社労士が存在する実務上のメリットについて教えて下さい。例えば、会社の労働・社会保険関係手続業務は、当社では、自社の総務担当の従業員が行うことができますが、勤務登録をしている社労士がいる場合といない場合の違いはありますか。
社会保険労務士は、労働法や関係諸法令を専門とする国家資格者であり、社内の事情をよく知っている勤務社労士がいることで、外部のコンサルタント等とは違った視点から、労使トラブルを未然に防ぐことや、よりよい労務管理に向けた助言や提案が得られる等のメリットがあります。もちろん、社労士本人のスキルや知識に左右される部分もありますから、開業、非開業を問わず、社労士には常に自己研鑽が求められます。
労働・社会保険関係の手続業務に関しては、社労士が手続を行う場合は、社会保険労務士法第17条により、添付書類の省略ができる場合があり、業務の円滑化、効率化にも役立ちます。
勤務社労士は自分の名前で業として社労士業務を行うことができないそうですが、社会保険労務士の独占業務以外の業務、例えば労働に関する相談・指導等の業務については社会保険労務士でなくても行うことができるのであれば、勤務社労士も一般の方を対象として相談・指導等の業務を行うことができるのではないでしょうか。
社会保険労務士法第2条第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係手続業務は法で定められた社会保険労務士の独占業務ですが、相談・指導等の業務(3号業務)は、社会保険労務士でなければ行うことができないというものではありません。社会保険労務士でない無資格者でもできる業務なのだから、勤務社労士が自ら行なうこともできるのではないか、というのがご質問の趣旨だと思いますが、そもそも社労士事務所や社会保険労務士法人に勤務登録している勤務社労士は、所属している社労士事務所や社会保険労務士法人と別に、独自に社労士の業務を行うことはできません。また、社労士事務所や社会保険労務士法人以外の一般企業等に勤務登録している勤務社労士は、勤務する事業所内の従業員等に関する業務を行うことしかできず、外部のお客様を相手に社労士業を行うことはできません。
そのため、勤務社労士が自ら外部の方を対象として労働・社会保険関係の書類作成や手続代行業務を行うことができないことはもちろんですが、無資格者でも行うことができる労働相談・指導等の業務を社労士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所等の勤務社労士が外部の方を対象として行う場合は、「社会保険労務士(社労士)」と称して業務を行うことはできないということになります。ですから、社労士事務所以外の事業所、例えばコンサルティング会社等が対外的な労働相談等の業務を行うと仮定した場合、その事業所の勤務社労士が相談業務を行うとしてもお客様に対して社会保険労務士と名乗ることはできず、「労務管理の専門家である社会保険労務士が相談に応じます」などと宣伝してお客様を集めることもできませんし、相談業務に際して社会保険労務士の肩書きを記載した名刺をお客様に渡すこともできません。
このように、社労士事務所以外の一般企業等の勤務社労士が業務を行うにあたり「社会保険労務士」と名乗れる場合と名乗れない場合があります。上記の対外的な労働相談等を行う場合以外、例えば勤務する事業所の社内における内部的な労働相談業務等を行う場合や勤務する事業所の従業員の労働・社会保険関係手続業務を行う場合は社会保険労務士と名乗ることができ、社内の労働・社会保険関係手続業務を行うためにその会社の勤務社労士が行政機関等を訪問したときは、社会保険労務士の肩書きを記載した名刺を窓口で渡しても構わないということになります。
私は社労士事務所に勤めている勤務社労士ですが、所属している社労士事務所の所長と意見が合わないところがあり、自分の知識を生かして仕事をしたいと思うようになりました。そこで考えたのですが、「社会保険労務士」と名乗らなければ、労働法関係の知識を活用して、勤務している事業所に対抗して、独自に、例えば「〇〇労働相談所」等を設置して労働相談・指導等の業務(3号業務)をすることはできますか。
事業における労務管理や労働・社会保険関係諸法令に関する相談・指導等の業務(3号業務)は、社会保険労務士でなくても行うことができます。しかし、勤務社労士は、社会保険労務士法第16条の2(勤務社会保険労務士の責務)で「勤務社会保険労務士は、その勤務する事業所において従事する第2条に規定する事務の適正かつ円滑な処理に努めなければならない。」とされており、それは勤務登録している事業所が社労士事務所であってもその他の一般の事業所等であっても同様です。社会保険労務士が独自に自分の名前で業務を行いたいのであれば、開業登録して行うのが本来のあり方です。