社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
一般企業に勤務登録している社労士が存在する実務上のメリットについて教えて下さい。例えば、会社の労働・社会保険関係手続業務は、当社では、自社の総務担当の従業員が行うことができますが、勤務登録をしている社労士がいる場合といない場合の違いはありますか。
社会保険労務士は、労働法や関係諸法令を専門とする国家資格者であり、社内の事情をよく知っている勤務社労士がいることで、外部のコンサルタント等とは違った視点から、労使トラブルを未然に防ぐことや、よりよい労務管理に向けた助言や提案が得られる等のメリットがあります。もちろん、社労士本人のスキルや知識に左右される部分もありますから、開業、非開業を問わず、社労士には常に自己研鑽が求められます。
労働・社会保険関係の手続業務に関しては、社労士が手続を行う場合は、社会保険労務士法第17条により、添付書類の省略ができる場合があり、業務の円滑化、効率化にも役立ちます。
勤務社労士は自分の名前で業として社労士業務を行うことができないそうですが、社会保険労務士の独占業務以外の業務、例えば労働に関する相談・指導等の業務については社会保険労務士でなくても行うことができるのであれば、勤務社労士も一般の方を対象として相談・指導等の業務を行うことができるのではないでしょうか。
社会保険労務士法第2条第1号及び2号に規定された労働・社会保険関係手続業務は法で定められた社会保険労務士の独占業務ですが、相談・指導等の業務(3号業務)は、社会保険労務士でなければ行うことができないというものではありません。社会保険労務士でない無資格者でもできる業務なのだから、勤務社労士が自ら行なうこともできるのではないか、というのがご質問の趣旨だと思いますが、そもそも社労士事務所や社会保険労務士法人に勤務登録している勤務社労士は、所属している社労士事務所や社会保険労務士法人と別に、独自に社労士の業務を行うことはできません。また、社労士事務所や社会保険労務士法人以外の一般企業等に勤務登録している勤務社労士は、勤務する事業所内の従業員等に関する業務を行うことしかできず、外部のお客様を相手に社労士業を行うことはできません。
そのため、勤務社労士が自ら外部の方を対象として労働・社会保険関係の書類作成や手続代行業務を行うことができないことはもちろんですが、無資格者でも行うことができる労働相談・指導等の業務を社労士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所等の勤務社労士が外部の方を対象として行う場合は、「社会保険労務士(社労士)」と称して業務を行うことはできないということになります。ですから、社労士事務所以外の事業所、例えばコンサルティング会社等が対外的な労働相談等の業務を行うと仮定した場合、その事業所の勤務社労士が相談業務を行うとしてもお客様に対して社会保険労務士と名乗ることはできず、「労務管理の専門家である社会保険労務士が相談に応じます」などと宣伝してお客様を集めることもできませんし、相談業務に際して社会保険労務士の肩書きを記載した名刺をお客様に渡すこともできません。
このように、社労士事務所以外の一般企業等の勤務社労士が業務を行うにあたり「社会保険労務士」と名乗れる場合と名乗れない場合があります。上記の対外的な労働相談等を行う場合以外、例えば勤務する事業所の社内における内部的な労働相談業務等を行う場合や勤務する事業所の従業員の労働・社会保険関係手続業務を行う場合は社会保険労務士と名乗ることができ、社内の労働・社会保険関係手続業務を行うためにその会社の勤務社労士が行政機関等を訪問したときは、社会保険労務士の肩書きを記載した名刺を窓口で渡しても構わないということになります。
私は社労士事務所に勤めている勤務社労士ですが、所属している社労士事務所の所長と意見が合わないところがあり、自分の知識を生かして仕事をしたいと思うようになりました。そこで考えたのですが、「社会保険労務士」と名乗らなければ、労働法関係の知識を活用して、勤務している事業所に対抗して、独自に、例えば「〇〇労働相談所」等を設置して労働相談・指導等の業務(3号業務)をすることはできますか。
事業における労務管理や労働・社会保険関係諸法令に関する相談・指導等の業務(3号業務)は、社会保険労務士でなくても行うことができます。しかし、勤務社労士は、社会保険労務士法第16条の2(勤務社会保険労務士の責務)で「勤務社会保険労務士は、その勤務する事業所において従事する第2条に規定する事務の適正かつ円滑な処理に努めなければならない。」とされており、それは勤務登録している事業所が社労士事務所であってもその他の一般の事業所等であっても同様です。社会保険労務士が独自に自分の名前で業務を行いたいのであれば、開業登録して行うのが本来のあり方です。
勤務社労士、あるいはその他登録の社労士が、いずれ開業しようとしている場合、業務に関するスキルや経験を得るため、また、見込客獲得のために無料で自分の名前で他人からの依頼を受けて社労士業務を行ってもよいでしょうか。報酬を得なければ業として成り立たないので、「業として行う」ことにはならないと思うのですが。
ご質問のような行為は、社会保険労務士法違反となります。社会保険労務士法第2条に社会保険労務士の業務についての規定があり、「~に掲げる事務を行うことを業とする」という文言がありますが、そこでの「業とする」とは、社会保険労務士法第2条に規定された社会保険労務士の業務を、反復継続して行う意思を持って、反復継続して行うことをいい、有償、無償の別を問わないとされています。「勤務登録」や「その他登録」の社労士(非開業社労士)は、例え無料であっても、自分の名前で社労士業務を引き受けることはできません。
職務上請求書は勤務社労士でも使うことができますか。
社労士には、職務上の理由で、委任状がなくても住民票や戸籍謄本を取得できる手段が用意されています。これを職務上請求といい、具体的には「職務上請求書」を関係行政機関の窓口に提出することにより、指定した人の住民票等を取得できます。もちろん、社労士がその業務を遂行するために必要な範囲で使用する場合に限られます。
その「職務上請求書」を勤務社労士が使うということについては、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人に勤務する社労士の場合は業務上使用することはあり得ます。しかし、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所に勤務登録する勤務社労士の場合は、社内の従業員についての手続きしか行うことができず、実務上職務上請求書を使用することはありません。
社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所に勤務登録している社労士が、他者からの求めに応じて労働・社会保険関係手続業務を行うことはできないため、その目的で職務上請求書を使用することもできないということになります。