社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
全国社会保険労務士会連合会とは、どのような団体ですか。
全国社会保険労務士会連合会(以下「連合会」といいます。)は、社会保険労務士法第25条の34に基づき全国の社会保険労務士会が厚生労働大臣の認可を受けて設立する特別な法人であり、全国の社会保険労務士会は連合会の会員という位置づけとなります。
連合会は、社会保険労務士会の全国的な連合組織として、社会保険労務士会の活動と機能の強化、拡充、また、その活動の全国的な統一を図るための団体であり、社会保険労務士会の会員の品位を保持し、その資質の向上と業務の改善進歩を図るため、社会保険労務士会及びその会員の指導、連絡に関する事務、社会保険労務士の登録に関する事務を行うほか、社会保険労務士試験の試験事務及び代理業務試験事務を行うことを目的としています。
社会保険労務士には「開業社会保険労務士」や「勤務登録」「その他登録」等の区分があるそうですが、その違いは何でしょうか。
社会保険労務士には「開業」「社会保険労務士法人の社員」「勤務」「その他」の4種類の登録の種別があり、勤務登録とその他登録を合わせて「非開業」として区分されることがあります。また、登録の種類によって社会保険労務士としての業務等が制限されることがあります。なお、開業から非開業への変更やその逆の変更など、登録の種別の変更は可能です。
登録の種別について簡単に解説すると下記のようになります。
①開業社会保険労務士
簡単に言うと、「自分の名前で」業として社会保険労務士の仕事をすることができるのが「開業社会保険労務士(開業社労士)」ということになります。開業社労士の仕事の仕方については、例えば大きな事務所を設置して事務員を何人も雇用している人や、自宅に事務所を構えて業務を行っている人もいるなど様々ですが、開業社労士は「事務所」を1か所設置しています。
②社会保険労務士法人の社員
「社会保険労務士法人」の社員である社会保険労務士は、法人に雇用されて勤務する従業員ではなく、社労士業務を組織的に行うことを目的として社会保険労務士によって設立された法人の社員(出資者)という位置付けであり、開業社労士的性格を持っています。
③勤務登録
開業社労士や社会保険労務士法人の社員以外の社労士(非開業社労士)としては、まず、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人、あるいは一般企業の事業所等に勤務登録している社労士(勤務社労士)が挙げられますが、社労士事務所や社会保険労務士法人に勤務登録している社労士は、勤務している社労士事務所や社会保険労務士法人と別に独自にお客様と契約して社労士業を行うことはできません。また、それ以外の一般企業等に勤務登録している社労士は、勤務している事業所の従業員の手続き等、事業所内の社労士業務しか行うことができません。
④その他登録
「その他登録」の社労士は、社会保険労務士法に規定された社会保険労務士の業務を社労士として行うことはできず、そのため、無資格者でもできる労働相談等を行う際に「社会保険労務士」と名乗って相談業務を行うこともできません。自ら開業登録して社労士業務を行うことをせず、所属する事業所があってもそこで勤務登録もしない、例えば企業等に勤務していて開業登録はしない状況であり、しかもその企業内で社労士業務に該当する業務を扱う部署にいないようなケースで「その他登録」として社会保険労務士会に登録している場合があります。
「その他登録」については、社労士として業務を行うことはできなくても、社労士会の会員として、他の登録区分の会員と同様に連合会や所属する都道府県社労士会等が行う研修等への参加ができ、連合会や都道府県社労士会等から各種情報を得られる、他の社労士との人的ネットワークを形成することができる等のメリットがあります。
当社は社会保険労務士事務所でも社会保険労務士法人でもない一般の企業ですが、勤務する従業員の中に社会保険労務士として登録している者がいます。その従業員は社内での労働・社会保険関係手続を行うことはなく、社労士業務と関わりのない部署に所属しています。社労士業務を行わない従業員であっても社労士であれば、会社の名刺に「社会保険労務士」と記載しても問題ないですか。
ご質問のケースとしては、企業に勤務している従業員が開業登録をしている場合と「勤務登録」や「その他登録」のいわゆる非開業登録である場合の二つが考えられます。
まず、その従業員が勤務登録ではなく開業登録をしている場合には、個人事業主としての開業社労士は、自らの事務所の名刺に社労士と表示することはできますが、その社労士が一般企業等に勤務している場合に勤務先の事業所の名刺に社労士と表示することはできません。開業社労士として事務所を開設しながら他の事業所において社労士と称するのは社会保険労務士法第18条第1項(事務所1か所の原則)に抵触するからです。
社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の企業で、例えば営業等の社労士業務と関係のない部署にいる従業員が都道府県社会保険労務士会会員として「勤務登録」や「その他登録」をしている場合、その従業員は、自らが所属する企業の顧客等に向けて、対外的に社会保険労務士として労働、社会保険関係の指導・助言(3号業務)を行うことはできません。また、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の企業等が労働・社会保険関係手続業務(1・2号業務)を行うことはできないため、当然その企業内の社労士がその企業の顧客等の労働・社会保険関係手続業務(1・2号業務)を行うことはできません。
一般の企業等に非開業として社労士登録をしている従業員が在籍し、その従業員が社労士業務を行わない、あるいは社労士として社労士業務を行うことができない場合にその従業員が事業所の名刺に「社会保険労務士」と記載すると、対外的に社労士業務を行うことができるような誤解を与えてしまう危険性があるため、記載しないのが望ましいということになります。
開業社労士は事務所を1か所しか設置できないそうですが、開業社労士が他の開業社労士の事務所に勤務して仕事を手伝うことや、社労士事務所以外の一般の事業所等に勤務することは可能でしょうか。
おっしゃるとおり、社会保険労務士法の規定により開業社労士は事務所を2か所以上設置することはできませんが、開業社労士が他の事業所に勤務してはならないということではありません。ただし、開業社労士が他の開業社労士事務所に勤務するときは、社労士としてではなく「ひとりの従業員として」業務を行うこととなり、二つの社労士事務所で「社会保険労務士(社労士)」と名乗って業務を行うことはできません。また、開業社労士であると同時に他の社労士事務所に勤務登録するような二重の登録をすることはできません。
開業社労士が他の一般の企業等に勤務しながら自ら業として社労士業務を行うことについては、法律等で禁止されてはいませんが、勤務先事業所に就業規則等で副業禁止の規定がある場合は無理ということになります。また、雇われていれば時間的に拘束され、勤務先での仕事もしなければなりません。ライバルとなる他の社労士事務所も存在している状況で、二足のわらじを履いて社労士事務所として業績を伸ばすのは困難な場合が多いと思われます。
開業社労士は事務所を1か所しか設置できないということについては、言い換えると開業社労士として複数の事務所を兼務することはできないということになりますが、勤務社労士や社労士事務所に勤務している事務員は、他の社労士事務所を兼務することはできますか。
勤務社労士は複数の事業所を兼務する形で登録することはできません。しかし、社労士事務所に勤務する事務員が他の事務所の事務員を兼務することについては禁止されていませんので、社労士事務所に勤務する事務員の方が他の社労士事務所にも勤務することについては差支えないということになります。
ただし、社労士事務所には、業務についての機密保持や個人情報の保護等が高いレベルで求められるため、機密事項の取扱いや文書の管理等が適正に行われるよう注意が必要です。特に、何らかの事情で複数の社労士事務所が同一の住所に事務所を設置している場合には、業務の受付や連絡から費用の請求等に至るまで、業務全般において混同されないようにすることが、トラブル防止の観点から重要になります。