社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)
社会保険労務士が雇用保険関係届出の電子申請の照合省略を希望する場合に、従来は都道府県労働局ごとに申出をすることになっていたのが、平成30年から扱いが変わったと聞きました。照合省略の申出を行うメリットは何でしょうか。また、社会保険労務士事務所以外の事業所で勤務社労士が手続きをする場合はどのような扱いになりますか。
社会保険労務士が行う労働・社会保険関係届出業務についても、近年は電子申請が増えています。今後、手続きの電子化の進展により社会保険労務士の仕事のあり方も変化していく可能性があります。
ご質問の、社会保険労務士の雇用保険関係届出の電子申請に係る照合省略については、従来雇用保険関係届出の電子申請の照合省略を希望する場合、都道府県労働局ごとに行う必要があった申出について、平成30年2月1日以降は、社会保険労務士会を通じ管轄労働局に申出を行うことで、全国の公共職業安定所における照合省略を希望する申出があったものと取り扱われることになりました。既にいずれかの労働局から照合省略の承認がなされている社会保険労務士は、他の都道府県において改めて個別に申出を行わなくても、平成30年2月1日以降、全国の公共職業安定所に対する申請・届出について照合省略が可能となっています。照合省略についてのこのような取扱いは社会保険労務士が業として雇用保険関係届出を行う場合及び一般の事業所に勤務登録した社労士(「その他登録」は不可)がその事業所の従業員の関係手続を行う場合に限られています。一般の事業所に勤務登録した勤務社労士の場合、所属する事業所の従業員に関する手続が対象であり、例えばある会社にいくつか支社があり、そのうちの一つの支社に所属する勤務社労士の場合、本社や別の支社の従業員の手続については社会保険労務士として業務を行うことはできず、電子申請の照合省略の対象にもなりません。
なお、社会保険労務士が、過去の届出実績から適正な取扱いができず、照合省略を可能とする要件を満たさないと判断される場合には、照合省略の承認が撤回されることもあります。社労士にとって、適正に業務を行うことによる関係機関との信頼関係が重要であることは、電子申請においても変わりません。
社会保険労務士は、例えば労働者の賃金未払い等の問題について労働者から依頼があった場合に、労働者と共に、あるいは単独で事業所に行って、労働法関係の専門知識を生かして事業主に対し賃金を払うように主張、交渉等をすることはできますか。
弁護士法第72条で「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立、審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と規定されています。ご質問のように、社労士が労働者に代わって事業主との交渉を労働者の代理人として行い、主張、意思表示を行うことについては、特定社会保険労務士が裁判外紛争解決手続(ADR)のあっせんの場等で行う場合を除き、社会保険労務士法に根拠規定はなく、弁護士法72条に違反する(非弁行為)ことになります。
労働者ではなく事業主に依頼されて、労働者に対し意思表示を行うことについても同様ですので、注意が必要です。
社会保険労務士は、顧問先の事業主から依頼された場合、その事業所の従業員についての解雇や退職勧奨等の意思表示を、事業主に代わって行うことはできますか。
ご質問のような状況で、社会保険労務士に広範にわたる代理権は与えられておらず、個別の交渉で社会保険労務士が事業主の代理人になること等については、弁護士法第72条で禁止されています。弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができません。社会保険労務士が代理人となれるのは、特定社会保険労務士が個別労働紛争において裁判外紛争解決手続(ADR)のあっせんの場に立ち会う場合等に限られます。
また、解雇の問題については、労働契約法第16条によって相当性、合理性を欠く解雇は無効とされます。社会保険労務士が事業主に依頼されて解雇等の問題に関与する場合、労働社会保険諸法令に違反する行為について指示をし、相談に応じ、その他これらに類する行為をすることは社会保険労務士法第15条(不正行為の指示等の禁止)により禁じられていることを常に意識していなければなりません。
社労士が顧問先の事業主等の顧客から労務管理、労働・社会保険等に加えて税務についての質問、相談等をされた場合には、その社労士が税金についての知識もあれば、労働関係だけでなく税務相談についても答えて指導、助言等をしていいでしょうか。
社会保険労務士法第2条(社会保険労務士の業務)第1項第3号の「相談・指導」業務(3号業務)は社会保険労務士でなくても行うことができますが、税理士法に規定された「税務相談」の業務は税理士以外の者が行うことはできません。税理士でない者が税に関する相談を受け、それに答えて助言等をすると、税理士の独占業務の侵害とされることがあるため、注意しなければなりません。
中小企業庁で扱っている「補助金」についての申請書作成支援等の業務は、社会保険労務士が行うことはできますか。
中小企業庁で扱っている各種補助金については、社会保険労務士法に規定はなく、その意味で社会保険労務士の業務ではありません。また、他の士業の独占業務という扱いにもなっていませんが、各種補助金の申請については、中小企業の経営支援に関する専門的な知識、提案力、表現力等が要求されます。
社会保険労務士は、一人の経営コンサルタントとして補助金についての申請支援等の業務を行うことができるという扱いになります。