社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
開業社労士が事務所を設置するにあたり、ある特定の住所に登録上の事務所を設置しながら、実際の業務はそれ以外の場所で行うようにしてもよいでしょうか。
事務所として登録した住所に実態として事務所が存在しない場合や、いわゆる「住所貸し」で住所を提供するようなサービス、あるいは登録した住所で郵便物や電話の受付も含めて対応するような類似のサービスを利用し、社会保険労務士やその他従業員が常駐しない場所を社会保険労務士の事務所として登録することについては、社会保険労務士法違反となる危険性があります。
社会保険労務士法第18条における「事務所」の定義は、「開業社会保険労務士が継続的にその業務を執行する場所」であり、その判断は外部に対する表示、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実に基づくこととなります。事務所として登録した住所において実際の業務ができず、業務上必要な各種書類の管理もできないような、事務所の体をなしていない状況では、そこは事務所の定義から外れることになります。また、登録した事務所がありながら実際には他の場所で業務を行っているということについても「その業務を行うための事務所を二以上設けてはならない」という社会保険労務士法第18条の規定に反することになります。
開業社会保険労務士の事務所については、業務活動の本拠として実際に業務を行う場所を登録するようにしなければなりません。
例えば社会保険労務士事務所が税理士事務所と同一の住所、同じ建物の中に設置されている場合、電話番号を税理士事務所と同じ番号としてもいいですか。
社会保険労務士は税理士と扱うことができる業務が異なり、税理士事務所で社労士業務(労働・社会保険関係手続業務)を行うことはできません。また、社労士事務所が税務代理や税務相談等の税理士業務を行うこともできません。独占業務の扱いについての混乱や契約上のトラブル、事故等を防ぐ意味からも、同じ建物に社労士事務所と税理士事務所、あるいは他の事業所の事務所がある場合でも、電話番号はそれぞれ別の番号にするような扱いにするべきです。
開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が社労士業務の中の特定の業務、例えば障害年金について、都道府県社会保険労務士会に登録された事務所名と異なる名称の「障害年金相談センター」や「支援センター、申請センター、サポートセンター、オフィス」等を設置して業務を行うことはできますか?
開業社会保険労務士や社会保険労務士法人が、その事務所名、法人名と異なる事業所の名前を使って社労士業務を引き受けることは社会保険労務士法違反となります。
ご質問のような場合、仮に「〇〇障害年金相談センター」や「〇〇支援センター」「申請センター」等を設置し、そこの代表者等が社会保険労務士であったとしても、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人以外の一般の事業所で障害年金(障害厚生年金、障害基礎年金等)の手続代行業務を行うことはできません(社会保険労務士法第2条第1項第1号、第2号、第27条)。また、「〇〇事務所」「〇〇相談センター」「社会保険労務士〇〇」等の名称の如何にかかわらず、開業社会保険労務士は複数の事務所を設置することができず、社会保険労務士法人の社員は、所属する法人以外に事務所を設置することはできません(社会保険労務士法第18条第1項、第2項)。
開業社会保険労務士は、1か所の事務所についてその名称及び所在地が登録事項とされています(社会保険労務士法第14条の2第2項)。また、社会保険労務士法人の社員が自己または第三者(ここでは例えば「〇〇障害年金相談センター」や「支援センター」等)のために社会保険労務士法人の業務の範囲に属する業務を行うことは禁止されています(社会保険労務士法第25条の18)。そのため、例えば「運営:〇〇社労士事務所、社会保険労務士法人〇〇」等の表記をしながら登録された社労士事務所や社会保険労務士法人の名称と異なる事業所名を使用し、「〇〇相談センター」等で社労士業務を引き受けるような宣伝は、誤解や混乱、契約上のトラブルの原因にもなります。また、行政区画の地名を冠した「〇〇年金相談センター」等の名称は、都道府県、市町村の公的機関等を詐称しているように見える場合があります。
社労士業務を行うにあたり「〇〇相談センターに相談しに行くと、そこで実際に業務を行うのは別の名称の社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人」というような品位を欠く手段で顧客を誘引することや、社会保険労務士事務所又は社会保険労務士法人でありながら、社労士業務について、都道府県社会保険労務士会に登録された事務所名や法人名と異なる名称の「〇〇相談センター」等を設置、運営することは、信用失墜行為であり、社会保険労務士法の規定に照らし適切ではないため、行うべきではありません。
社会保険労務士法人の社員は、法人とは別に自分の事務所を持つことはできますか。
社会保険労務士法人の社員が、自らが社員となっている社会保険労務士法人とは別に社労士業務を行う事務所を設置することは、社会保険労務士法(第18条第2項)により禁止されています。
法人の社員である以上は法人の業務に専念することが要求され、法人との利害衝突を防止しなければなりません。社員には、競業禁止義務が課せられています。また、顧客の視点からは、ご質問のような場合を想定すると、業務を依頼した場合に社会保険労務士法人に依頼したのか個人の社会保険労務士事務所に依頼したのかがはっきりしなくなってしまいます。そのようなことは避けなければなりません。