社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)※掲載事項に関する一般の方からのご質問にはお答えしておりませんのでご了承ください。
社労士会労働紛争解決センターに、もう一方の当事者に対し金銭の支払いによる和解を求める内容のあっせんの申立をするにあたり、申立人が特定社会保険労務士に代理人を依頼する場合は申立金額に120万円という上限があると聞きました。仮に申立てをする際の価額が上限金額以内であったとしても和解時の金額が上限の120万円を超えた場合には、既に代理人になっていた特定社会保険労務士は代理人を辞任するか、弁護士との共同受任に変更しなければならないのでしょうか。
平成27年4月1日施行の第8次社会保険労務士法改正により、社労士会労働紛争解決センターにあっせんの申立をする場合に特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限は120万円となり、120万円を超える場合には弁護士との共同受任が必要とされています。
しかし、ご質問の場合のように、厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において紛争の目的価額が上限の金額である120万円以内であって、交渉を行った結果和解金額が120万円を超えるような場合は、申立において単独で代理人となっていた特定社会保険労務士はそのまま和解契約締結まで単独で代理人となることができます。
社労士会労働紛争解決センターへのあっせんの申立に際して特定社会保険労務士が代理人になる場合は、申立金額に120万円という上限があるそうですが、代理人を頼まずに申立者本人のみで申立を行う場合には、申立金額の上限はありますか。
ご質問のように、社労士会労働紛争解決センターに、特定社会保険労務士を代理人とせずに、本人があっせんの申立を行う場合、申立金額に上限はありません。
120万円の上限額は、社労士会労働紛争解決センターに特定社会保険労務士を代理人としてあっせんの申立を行う場合の規制(120万円を超える場合には弁護士との共同受任が必要)となっています。
個別労働紛争において、裁判外紛争解決手続(ADR)でのあっせんの申立を、労働者本人ではなくご家族の方等が行う場合、特定社会保険労務士はそのご家族の方の代理人になれますか。また、特定社会保険労務士が裁判外紛争解決手続において代理人となっている場合、その特定社会保険労務士の都合でその代理人業務を他の人に代理させることはできますか。
ご質問のような、労働者本人以外の方、例えば労働者の家族や、労働者が死亡した場合の相続人等が紛争当事者となる紛争については、特定社会保険労務士が行うあっせん代理業務の対象とはなりません。
特定社会保険労務士の代理人業務をさらに代理させることについては、あっせん代理業務について委任を受けた特定社会保険労務士が、他の者に当該業務を代理(復代理)又は代行させることは認められません。また、社会保険労務士法人(ここでは社員のうちに特定社会保険労務士がいる場合に限る)が受託したADRでの代理人としての業務を、その法人の使用人である特定社会保険労務士又は社員である特定社会保険労務士以外の者に代理させることはできません。
勤務する会社と労使トラブルになっているのですが、その会社の顧問社労士が特定社会保険労務士であれば、その社労士に個別労働紛争に関する裁判外紛争解決手続(ADR)について代理人になってもらうことはできますか。実は私はその社労士とは個人的に知り合いで、しかも会社の顧問社労士なので、その会社の労使トラブルについては事件を把握しやすいのではないかと思います。
話が少し複雑になりそうなので、便宜上、会社とトラブルになっているご質問の労働者の方をA、特定社会保険労務士をB、会社をC社としましょう。
このような状況では、その特定社会保険労務士Bは、例えばこの労使トラブルの事件(同一の事件)の解決についてC社から代理人としての業務を依頼されている場合は、社会保険労務士法第22条第2項第1号の規定(双方代理の禁止)により、この事件について労働者Aからの依頼を引き受けることはできないこととされています。その業務を受けることにより、特定社会保険労務士を信頼して依頼した顧客の信頼を裏切り、社会保険労務士の品位を失墜させることになるからです。
なお、このように、事件の一方の当事者の代理人になっているにもかかわらず、同一の事件の他方の当事者の代理人になること(双方代理)については、社会保険労務士法の規定だけでなく、民法第108条により禁止されているところです。
ご質問では、労働者Aは、C社との間でトラブルの発生により利害が対立しており、一方、特定社会保険労務士Bは、同一の事件についてC社から今のところ依頼を受けてはいないのかもしれませんが、Bは顧問先としてC社から報酬を得ており、BとC社との間には信頼関係があります。そのため、特定社会保険労務士Bは、AとC社との間の労使関係において紛争対立が発生している状況下で、Aからの依頼を受けるべきではありません。同一の事件で特定社会保険労務士Bが顧問社労士としてC社から相談・依頼を受ける可能性が高く、その場合、双方代理の禁止の規定に抵触する危険性があります。
ここで挙げた説明の事例と同一ではなくても、類似のケースで問題となることもあり得ますので、特定社会保険労務士の立場としても、職業倫理上十分注意が必要です。
当社が労働組合と団体交渉を行う際に、当社の顧問社労士に同席してもらうことや、団体交渉の席上で労働者側代表に対し社労士から直接意見してもらうようなことは可能でしょうか。
社会保険労務士は労働法と労務管理等を専門とする国家資格者であり、ご質問のようなケースでお役に立てることもあると思います。ただし、労使間の交渉事などにおいて社会保険労務士が依頼者の代理人となれるのは、個別労働紛争における労働局のあっせんや社会保険労務士会が運営する「社労士会労働紛争解決センター」でのあっせんの場に特定社会保険労務士が立ち会う場合等に限られています。
したがって、労働組合と事業所との集団的な労使関係について交渉を行う場合において、社会保険労務士が当事者の一方の代理人となることはできませんが、同席して依頼者とともに交渉すること、あるいは依頼者に指導・助言等をすることは可能です。例えば会社側に依頼されて社会保険労務士が団体交渉に同席する場合、社会保険労務士が処分権を持つ代理人として直接相手方に対し意思表示することはできませんが、会社側に対して助言等を行うことはできるということになります。