社会保険労務士が業務に関し違法行為や不正等の不適切な行為を行った場合に処分等をされることはありますか。また、不適切な行為としては、どのようなものがありますか。

カテゴリ: 社労士の職業倫理

 社会保険労務士には、専門家としての知識や立場を悪用して不正を行わないように、守るべき義務等が定められています。その概略については下記のようになります。

不正行為の指示等の禁止
 社会保険労務士は、依頼を受けた企業等に不正行為について、指示をしたり、相談に応じたりしてはいけません。例えば、不正に保険給付を受けること、不正に保険料の賦課又は徴収を免れること、労働基準法、労働安全衛生法、雇用保険法、厚生年金保険法、健康保険法等に違反する行為を行うこと等は不正行為となります。
 不正行為について、不正の具体的な方法を教えること、法令違反の行為の相談相手となること、法令違反の行為に肯定的な回答をすること等は、不正行為についての「指示」や「相談」とみなされます。

信用失墜行為の禁止罰則について
 社会保険労務士は、社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはいけません。社会保険労務士法や労働社会保険諸法令に違反する行為がこれに該当するのはもちろんですが、刑法上の犯罪行為その他非行についても該当します。
 不正行為等を行った場合、社会保険労務士会からの注意勧告や処分、労働局等の調査を経て厚生労働大臣による業務停止や失格等の懲戒処分、司法手続により刑事罰(懲役・罰金)が科せられることがあり、社会保険労務士の業務を行うことができなくなる場合があります。

情報発信の際に配慮すべき観点
 ITの進歩、発展により、現代社会は様々な情報が氾濫する状況下にありますが、社会保険労務士は、その業務について、インターネット上などで、誇大な広告、利用者に過度の期待を持たせるような表現、その他利用者をあおるような不適切な表現を行わないように注意しなければなりません。
 不適切な表現としては、例えば、助成金受給や年金受給手続代行について、「受給率〇〇%、成功率〇〇%」等の文言を使って利用者の期待をあおるようなことや、「成功報酬」等の言葉を用いることは、公的な制度において要件を満たすことにより支給が決定され、逆に要件を満たさなければ支給されない各種給付にはふさわしくありません。また、労働・社会保険関係の手続きで社会保険労務士が代行することの結果を「成功」(成功しなければそこには「失敗」があるということになります)という表現をすることは適切ではないとされています。「100%〇〇の味方です」や「お客様第一主義」といった、公正さについて疑問を抱かせるような表現、「社会保険料削減」等の労働者の福祉の向上に反する文言や、使用者がいたずらに労働条件を引き下げることを促すような表現等も避けなければなりません。

社会保険労務士の社会的責任について
 社会保険労務士は、法によりその資格を付与され、公の信用力を背景に、定められた分野において独占的に業務に従事することが認められています。それは、社会保険労務士に対する社会の信頼に基づくものであり、社会保険労務士にはそれに応える社会的な責任があります。高度な専門性を持つ国家資格者として、社会保険労務士は、高い職業倫理をもって業務に向き合わなければならないことを常に認識しなければなりません。