社会保険労務士は、依頼された仕事を断る自由が制限されているそうですが、どういう意味なのでしょうか。社会保険労務士は仕事を依頼されると断れないということでしょうか。

カテゴリ: 社労士の職業倫理

 開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない(社会保険労務士法第20条)こととされていますが、仕事の依頼を断ることができないということではありません。開業社会保険労務士は、社会保険労務士法により、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するため、その専門家としての資格を認められ、独占的に業務を行う特別な立場を与えられているので、その立場及び職責に鑑み、契約締結の自由が制限されているのです。
 それではいかなる場合に依頼を拒否できる「正当な理由」といえるかについては、社会保険労務士の公的な立場、職責のほか、業務運営の実情、依頼された事件の内容等を考慮する必要がありますが、例えば、依頼された事件が法令に違反するものであるとき、社会保険労務士の業務の範囲を超えるものであるときはもちろん、依頼された事務の内容からみて依頼者の希望の日時までに処理することが困難な場合等のように、依頼を拒む理由に故意性がなく、かつ、法律的、時間的、物理的にみて依頼に応ずることが困難とみられる相当な理由があるときは、「正当な理由」があるものとされています。
 なお、例えば開業社会保険労務士の経験が浅い、あるいは自分が不得意とする分野についての相談である場合には、なるべくその分野に堪能な他の社会保険労務士を紹介するように努めるべきでしょう。